31年絶えぬ涙 力をくれる亡き友のエレキギター 阪神大震災
がれきの中から掘り出した亡き友のエレキギターの音色は今も力を与えてくれる。忘れられぬ悲しみとともに。
薄暗い空間で「福本健一」と記されたプレートの前に、遺影とともに置かれたスマートフォンからロックのギターの音色が響き、嗚咽(おえつ)が漏れた。曲は約20分間流れ続けた。
「曲をかけたら、2人であいつの部屋にいたときを思い出してしもうてね」
阪神大震災から31年となった1月17日、神戸市中央区の東遊園地にある「慰霊と復興のモニュメント」を出た橋本昌一さん(57)=同区=は、鎮魂の紙灯籠(どうろう)の火を眺めながらポツリと話した。
◇ロックに魅せられ各地へ
福本さんは、橋本さんの中学時代の同級生。「15歳からニコイチやったね。25歳くらいまでかな」と橋本さんは懐かしむ。中学卒業後も洋菓子職人を志した福本さんと、美容師を目指した橋本さんは通っていた専門学校が近く、いつも一緒に行動していた。
共通の趣味がロック。「RCサクセション」や「ARB」などのライブを各地に見に行った。福岡にライブを見に行った時には台風で帰れなくなったのをきっかけに、2、3週間滞在。ラジオ局でアルバイトをしたり、ライブハウスを巡ったりしながら過ごした。「ジュリアナ東京にも行ったなあ」と橋本さんは笑う。
その後、橋本さんは美容師に、福本さんは洋菓子会社に就職したが辞めてバンド活動を続けた。
◇掘り出されたギター
だが、1995年1月17日の激震が福本さんの命を奪った。橋本さんや中学時代の同級生の上田弘さん(57)=神戸市須磨区=らは同市灘区の倒壊したアパートの部屋から福本さんの遺品を掘り出した。その中にあったのがエレキギターだった。
ギターは福本さんの母親が亡くなった後、福本さんの影響で音楽が好きになった上田さんが譲り受けた。傷んでいた配線や部品を修理し、設計の仕事をしていた上田さんの自宅のアトリエに置かれた。上田さんは疲れた時にギターを弾く。「福本、力をくれーと思いながらね」
1月、橋本さんは上田さんのアトリエを訪れた。橋本さんはギターをつま弾きながら「俺やったらこんなに直せへん。上田に渡して良かったんや」とぽつり。2人は「福本が見たらどない言うやろ。この光景」と笑って顔を見合わせた。
◇悲しみ、癒えずとも
橋本さんは時折、福本さんとよく訪れた大阪の心斎橋や難波を歩き、気分転換する。1月以外でもときどき月命日の17日に慰霊と復興のモニュメントを訪れることもある。
悲しみは癒えることはない。橋本さんは毎年1月17日はモニュメントで泣きじゃくる。「半身をもぎ取られたような思い。それが30年続いている。つらいよ」。その後、こう続けた。「でもね、そう思える人がいた、というのはありがたいな、とも最近思うんよね。30年たって、ちょっと話せるようになった」【柴山雄太】
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