謎の稲「ゆうだい21」のゲノムを解読 猛暑への耐性で近年注目
宇都宮大が育成した水稲品種「ゆうだい21」は、コシヒカリと南アジアで古くから栽培される「アウス」という品種群のイネの交配でできたことが分かったと、同大とかずさDNA研究所(千葉県木更津市)の研究チームが米科学誌「プロスワン」に発表した。
元となったイネは同大農学部付属農場(栃木県真岡市)で発見されたが、当時の栽培品種の記録が残っておらず、これまで「親」は分かっていなかった。
ゆうだい21は、1990年に同大農学部付属農場内の田んぼで見つかったイネを元に、優れた株の選抜を繰り返すなどして開発され、2010年に品種登録された。食味の良さに加え、猛暑でも低品質の米粒の発生が少ないことなどが近年注目されている。
チームは、起源や食味などを特徴付けている遺伝的な要因を解明するため、今回初めて全遺伝情報(ゲノム)を解読。DNAのほとんどはコシヒカリと一致していたが、少なくとも6カ所はアウス種のDNA断片に置き換わっていること、さらに母系がアウス種、父系がコシヒカリであることを突き止めた。
また、ゆうだい21は3万7522個の遺伝子(DNAの塩基配列の中で遺伝情報を持っている領域)のうち1017個はコシヒカリと塩基配列が違い、アウス種由来と考えられた。この中には、食味に関する遺伝子が2個あった。チームは高温耐性や食味の良さ、長期保存しても劣化しにくいといったゆうだい21の特徴はアウス種由来の遺伝子に起因するとみている。
ゆうだい21は、かつては「コシヒカリの突然変異」との説もあったが、今回の研究成果から、アウス種のめしべにコシヒカリの花粉がついてできた系統が元になったと考えられるという。
チームの池田裕樹・同大准教授は「地球温暖化の適応策(被害や悪影響を軽減するための対策)として、ゆうだい21のように高温耐性と優れた食味を兼ね備えた品種の開発はこれからますます重要になる。今回得られた知見は、今後の品種改良にも役立つのではないか」と話す。【大場あい】
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