被爆樹木を題材にしたアート展「帰郷」 広島市植物公園で展示

2025/11/21 08:15 

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 ノルウェーで活動するアーティストグループが、広島と長崎の原爆を生き延びた被爆樹木を題材に制作した作品を広島市植物公園(佐伯区)で展示している。写真やタペストリー、映像、音響などの作品を園内の森に溶け込むように配した。2024年からノルウェーで始まったアート展3部作の完結編で、「帰郷」というタイトルに世界へと旅立った記憶と物語が被爆地に戻ってきた意味を込めた。

 ノルウェー在住で景観デザインなどに携わる中英公子(えくこ)さんが企画し、3人のアーティストが参加した。

 ヘレーネ・エスペダール=セルヴォーグさんの作品は、被爆樹木2本をモノクロで、その子孫でノルウェーに贈られた若木をカラーで、それぞれ巨大なタペストリーにして並べて表現した。

 アシュリー友実子さんの写真作品は透過性のある軽い布(2メートル×3メートル)を使い、園内の樹木に張った綱から懸垂幕のように飾る。広島城のユーカリなど被爆樹木の写真は、風によるゆらぎや日差しによって表情を変える。

 ノーベル平和賞を選考するノルウェーでは、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の受賞(17年)を機に被爆樹木への関心が高まり、被爆地から贈られた種が芽吹いた子孫の木が育てられている。今回のアート展は昨年、今年と続けてノルウェー国内で開かれ、最終回を広島で開催することになった。

 15年の帰国時に被爆樹木の存在に魅せられた中さんは、昨年12月にオスロであった日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)への平和賞授賞式に合わせて、被爆樹木の種の贈呈式を企画した。

 初日の8日にはノルウェーの駐日大使らを招いてセレモニーがあった。アシュリーさんは「再生の物語に関わらせていただき、感謝したい」と感慨を口にし、中さんは「この企画は、アートを通して被爆樹木のメッセージを伝えるための新たな始まり」と語った。

 展示は30日まで。公園の入場料が必要。【宇城昇】

毎日新聞

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