<1分で解説>福岡県赤村の土地買収問題と公益通報の壁

2025/11/03 16:28 

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 福岡県が道路整備のために買収した土地が相場より高額だった問題で、県が「不適切だった」と認めた後、内部告発者を捜す調査をしていたことが分かりました。最近は公益通報者保護法の仕組みや、通報者が守られにくい現状も注目されています。1分で読めて役に立つ「サクッとニュース」、今回は「福岡県の土地買収問題と公益通報の壁」について解説します。

Q 福岡県の土地買収問題ってどんなこと?

A 福岡県は2025年6月に福岡県赤村の土地を道路整備のために買ったのですが、地権者の希望に沿うように土地代を増額し、周りの土地より高い値段で買収していたのです。毎日新聞が県の内部資料をもとに報道したことで明らかになりました。

Q どのくらい値段が上がっていたの?

A 県が最初に出した補償額は430万円でしたが、地権者の男性が納得しなかったため、最終的に約5倍の2165万円で買収しました。

Q 内部告発者捜しって何をしたの?

A 県は9月から職員に「不審な人を見なかったか」などと質問し、内部情報を漏らした人を捜す調査を始めました。調査内容を他の人に話さないよう口止めもしていました。

Q 内部告発した人を捜すことは問題なの?

A 法律違反などの問題を見つけた人が会社や役所の外に告発することを「公益通報」といい、告発した人は公益通報者保護法で守られています。でも、県の担当者は「今回は保護要件を満たしていないため、公益通報に当たらず、調査は問題ない」と説明しています。「県民のためになった事案だからといって情報流出は放置できない。経緯を調べるための聞き取りだ」とも話しています。

Q 公益通報者保護法のハードルって何かな。

A 公益通報者保護法で守られるには、通報内容が法律違反にあたることや、通報先ごとに決められた条件を満たすことなど、いくつかのハードルがあります。すべての不正への通報が保護されるわけではありません。

Q 専門家はどう考えているの?

A 消費者庁の「公益通報者保護制度検討会」で委員を務めた志水芙美代弁護士は「今回の用地買収を県は不適切だと認めて是正に動いており、公益性が認められる。県民の利益のために声を上げた人を特定しようとする行為は、制度の趣旨に反し不適切だ」と話しています。また、消費者庁の元職員で公益通報者保護法に詳しい淑徳大の日野勝吾副学長は「法が守ってくれなければ通報できず、不正を黙認する人は増えるだろう」と指摘しています。

毎日新聞

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