やがて来る「助けてもらえない災害」  どう備える?今できること

2025/09/18 11:00 

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 日本で想定される巨大地震のうち、甚大な被害の恐れがあるのが南海トラフ地震だ。

 ◇30年以内に80%の確率で発生

 南海トラフ地震の想定震源域は東海から九州の太平洋沖とされ、100年から150年ほどの間隔で繰り返し巨大地震が起きてきた。今後30年以内に80%程度の確率で起きるとされる。発生すれば津波が広範囲に押し寄せ、犠牲者は最大29万8000人と想定される。

 その南海トラフ地震に関連して発表されるのが、後発地震に備えた臨時情報だ。想定震源域の周辺で、規模がマグニチュード(M)6・8以上の地震など異常現象が起きると気象庁はまず、地震発生の5~30分後に「臨時情報(調査中)」を発表する。

 ◇巨大地震注意は1度発表

 専門家による検討会が、想定震源域内の地震がM7以上と評価したり、プレート(岩板)の境目がゆっくりとずれ動く「ゆっくりすべり」が通常と異なる形で起きたりした場合は「巨大地震注意」を出す。巨大地震注意は、2024年8月に宮崎県沖で起きた地震に伴って初めて出された。

 さらに詳しい解析によって、地震がM8以上と判断されれば、後発で巨大地震が起きる可能性が高まったとして「巨大地震警戒」を出す。巨大地震の可能性が高くないと見なされれば「調査終了」を、いずれも地震発生から最短2時間後に発表する。

 巨大地震警戒はまだ出されたことがない。出された場合は、後発地震の発生後では津波や土砂災害からの避難が間に合わない地域に避難指示を、要配慮者の避難が困難な地域には「高齢者等避難」を各自治体が発令し、1週間の事前避難を求める。

 ◇事前避難の対象は51万人超

 内閣府によると、1週間の事前避難を求められる住民は、16都県の129自治体の計約51万6000人に及ぶ。高齢者や障害者など要配慮者が半数以上を占める。都府県別では高知が約9万2100人で最も多い。検討中の自治体があるため、人数は今後さらに増える可能性がある。

 ◇専門家が語る「助けてもらえない災害」

 私たちはどう備えればいいのか。南海トラフ地震対策の国の作業部会で、とりまとめ役を務めた名古屋大の福和伸夫名誉教授に聞いた。

 南海トラフ地震が起きると、国民のおよそ半数の6000万人が全国で被災する。救助する消防士や陸上自衛隊員はそれぞれ約15万人しかおらず、国難級の災害は「助けてもらえない災害」となる。

 ◇みんなが助ける側に

 行政機関の対応だけでは限界があるため、みんなが助けられる側ではなく、助ける側に回らなければならない。

 例えば愛知県では、10万人以上が自動車関連の仕事に就いている。こうした組織的に動ける人たちをうまく活用すべきだ。自治体が企業と連携協定を結んで一緒に訓練をし、災害時には物資の運搬や避難所の運営などを依頼すればいい。民間が担える業務は積極的に任せることが求められる。

 最も大切なのは、国民一人一人が大災害に向き合って事前の対策をとることだ。住宅の耐震や耐火性能を高め、家具を固定する。沿岸部の住民は津波からの速やかな避難を心がける。水や食料、簡易トイレやカセットコンロなどを備蓄する必要もある。

 ◇都市のあり方の見直しも

 現代は都市部に人口が密集している。液状化現象が懸念される地域や木造密集地域、安全性が高いとは言えない高層住宅に多くの人が暮らしている。こうした都市のあり方を見直すことも減災につながるはずだ。

毎日新聞

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