さいたま市「適正に処理された」 公益通報の「放置」巡り答弁

2025/09/17 15:18 

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 さいたま市が、市立病院での薬剤の不適切使用を指摘する内部公益通報を1年半にわたり放置していたとされる問題を巡り、16日の市議会保健福祉委員会で議案外質疑が行われた。執行部は「公益通報制度を所管していないのでお答えを差し控えたい」と述べるとともに「この案件は制度にのっとって適正に処理されたと(法務・コンプライアンス課から)伺っている」と答弁した。

 この問題は、同病院で陣痛促進剤「アトニン」を日本産科婦人科学会の診療ガイドラインや薬剤使用上の注意が記載された添付文書に従わず、頻回に陣痛が起きている妊婦に過剰投与するといった不適切使用があったとして、2023年9月に同病院の元職員が法務・コンプライアンス課に内部通報をした。事情を聞き取りに訪れた保健所職員らに資料を提出するなどしたがその後、進捗(しんちょく)状況を尋ねても「調査中」としか回答が来ず、1年半が経過した。

 この日の委員会では、市議から「診療ガイドラインと異なる薬剤投与はあり得るのか」と質問されたのに対し、執行部は「一般論」と断った上で「ガイドラインは科学的根拠などに基づいて、最適と考えられる治療法を提示するもの。一方、医療者の臨床を否定するものではなく、ガイドラインは臨床現場で意思決定する際の判断材料の一つに過ぎない。ガイドラインと異なる医療を提供したとしても、直ちに法的な注意義務違反とは言えないものと解されている」と答弁した。

 また、病院を指導する組織体制は市にあるのかとの質問に対して、執行部は「医療法に基づく指導は保健所」と説明した上で「保健所から市立病院に対し、医療法に基づく問題があると指摘したことはない」と答えた。

 告発した元職員によると、市側は「内部通報の調査は一般行政職員が行った。医療行為の適切性などについて医学的見地からの調査は行っていない」と口頭で報告したという。元職員は、医学的見地からの調査を求め、再調査の申し入れ書を市に提出している。【鷲頭彰子】

毎日新聞

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