京大名誉教授の佐藤文隆さん死去 87歳 ブラックホール解明に貢献

2025/09/15 12:42 

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 アインシュタインの一般相対性理論に基づいてブラックホールに理論付けをするなど、宇宙物理学の分野で大きな成果を上げた京都大名誉教授の佐藤文隆(さとう・ふみたか)さんが14日、細菌性肺炎のため亡くなった。87歳。葬儀は親族で営む。喪主は長男理郎(りろう)さん。

 山形県生まれ。京大理学部物理学科を卒業。理論物理学の中心拠点・京大基礎物理学研究所の所長に38歳で就任し、話題を呼んだ。1973年仁科記念賞、75年松永賞を受賞、99年紫綬褒章。ブラックホールや星の進化、宇宙論に関する著書が多数ある。

 一般相対性理論と原子核素粒子物理の観点から、元素の起源や銀河の形成、宇宙の創成について研究。宇宙線の起源と加速、超新星からのガンマ線放射など高エネルギー天文学の分野でも活躍した。

 中でも、一般相対性理論の研究では72年、アインシュタイン方程式の新しい厳密解「冨松―佐藤解」を冨松彰・名古屋大名誉教授と共同で発見。予想されていなかった解を示したことで世界的に注目を集め、ブラックホールの理論的解明にも大きく貢献した。

 2024年には「量子力学の100年」(青土社)で第78回毎日出版文化賞(自然科学部門)を受賞した。

 佐藤さんと大学の同級生で、科学教育などを行うNPO法人を約15年前に一緒に設立した愛知大名誉教授の坂東昌子さん(87)は「博士号をとってもなかなか就職がない問題をなんとかしようと、知的人材が活躍できるNPO法人を設立し、多くの研究者が科学教育の分野に就職した。アイデアの豊富な人で人と違う視点で物事を見ていた。漫画も上手で時々描いてくれた。最近も本を執筆したり、講演で熱を込めて語られたり、最後まで活躍された」と悼んだ。【木許はるみ】

毎日新聞

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