関東はゼロ… 「災害救助法」はどう適用? カムチャツカ半島地震

2025/08/24 08:15 

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 ロシア・カムチャツカ半島付近で7月30日に起きた大地震で東日本大震災以来となる津波警報が発令された静岡県では、沿岸部の19市町で8200人余の住民が一時避難所に身を寄せた。県は「多くの人が生命または身体に危害を受け、または受けるおそれが生じている」として8市町に災害救助法の適用を決めた。結局、人的・物的被害はなかったが、救助法の適用はどのように決定され、適用によって何が変わるのか――。

 災害救助法は、大雨や地震など大規模な自然災害が発生したり、発生のおそれがあったりする場合に、住民の救助や保護を応急的に行うことを目的に定められた法律だ。都道府県が市町村を対象に適用の可否を判断する。適用により、救助・保護の主体は市町村から都道府県になり、かかった費用も国や都道府県が負担する。対象となるのは、避難所の設置、応急仮設住宅の提供、炊き出しなど食品の提供、飲料水の供給などだ。

 県が今回、適用を決めたのは、下田市、東伊豆町、沼津市、伊東市、富士市、伊豆市、静岡市、磐田市だ。住民に避難指示を出した16市町の半数に当たる。県内で3番目に多い954人が避難した焼津市、4番目の804人が避難した浜松市は、適用されなかった。

 県危機対策課によると、内閣府の助言を受け、▽避難所を開設し避難生活の継続が見込まれる▽災害対策本部を設置している――の二つを満たしているかどうかを適用基準とした。そのうえで、沿岸部の全21市町に意向を確認、要請のあった自治体はすべて適用したという。焼津市は基準をクリアしていたが、「被害がないので、救助にかかる費用もない」(防災計画課)として要請しなかった。浜松市の体制は、災害対策本部ではなく事前配備にとどまった。

 県によると、観測された津波は下田港の60センチが最高で、人的・物的被害はなかった。救助法の適用を受けた8市町からの費用負担の要請は、現時点で「避難所の開設」以外にないという。「避難所は夜には閉鎖されたので宿泊を伴うものではないが、職員の超過勤務手当分を申請する」という磐田市のケースのように、避難所詰め職員の手当などが対象になる見込みだ。

 今回救助法の適用を決めたのは、北海道、青森、岩手、宮城、福島、静岡、三重の7道県(対象は計118市町村)。関東地方で適用を受けた市町村がないなど地域バランスを欠いているようにも見える。内閣府の担当者は「災害は、自然現象と社会の脆弱(ぜいじゃく)性の掛け合わせで起きる。同じ程度の大雨でも地形の違い、住民の年齢構成、地域の災害対応能力によっても被害の度合いは変わる。それぞれの実情に合わせて判断した結果だ」としている。

 温暖化の影響などもあり、大雨などの災害は年々多くなっている。静岡県内では、平成では3回だった災害救助法の適用が、令和になって今回で6回を数える。先の内閣府担当者は「都道府県の担当者が市町村と普段からコミュニケーションをとっておくことが災害への備えにつながる」と話す。【照山哲史】

毎日新聞

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