ある日老後資金が「数十万円」 証券口座乗っ取り「想像絶する」被害
ある日サイトにログインすると、数千万円あったはずの証券口座の残高が数十万円に減っていた。売買した心当たりはない。老後のための資金が知らないうちになくなっていた。
証券口座の乗っ取り被害にあった男性(60)がインターネット証券最大手「SBI証券」(東京)に原状回復を求める訴訟を起こした。
「想像を絶した」。4日に記者会見した男性は被害の瞬間と証券会社とのやり取りを振り返った。
原告は横浜市の大学講師、里吉竜一さん。約25年前から老後の資金として金融商品を定期的に購入し、コツコツ貯蓄してきた。
ところが、2025年4月下旬、パソコンでSBI証券のサイトにログインし目を疑った。長期投資で積み立ててきた数千万円分の金融商品が、口座から消えていたのだ。
最初は見間違えかと思ったが、動かぬ現実だった。急いでコールセンターに電話したが対応は冷たかった。「一切補償できません」
詳しい理由は告げられなかったが、一つの契約上の規約が関係した可能性があった。正しいユーザーネームとパスワードでログインされていれば責任を負わない――。証券会社の免責を定めたものだ。
口座の乗っ取りの手口は、偽のウェブサイトに誘導し、IDやパスワードを入力させて盗む「フィッシング」が代表的だ。この場合、盗まれたIDやパスワードでログインされても、数字やアルファベット自体は正しいため、証券会社の免責が成立する可能性がある。
里吉さんは日ごろから「フィッシング」を警戒し、メールからウェブサイトに飛ぶリンクはクリックしないようにしていた。パソコンのブックマークからSBI証券のマイページに入るように心がけていたという。
何が直接の原因で被害に遭ったのかは分かっていない。ただ、思い当たる過失はなく、第三者による巧妙な不正アクセスとしか考えられなかった。被害相当分の金融商品は返還されるべきだと提訴に踏み切った。
証券口座の乗っ取りが全国で相次いだことを受け、SBI証券は5月2日、他の大手証券会社など9社とともに、何らかの補償をする方針を表明した。
しかし、里吉さんが問い合わせても、SBI証券は全額補償するのか、しないのか、明確な回答をしなかった。
その後、他の大手証券会社は顧客に過失がないと認められる場合に勝手に売却された株式を返還する方針を明らかにした。
「多くの被害者がいる。きちんとした被害回復がされるように、声を上げようと思った」。里吉さんは提訴の理由を語った。
SBI証券は提訴について「訴状を受け取っておらずコメントできない」としている。
金融庁によると、口座乗っ取りによる不正取引件数は1~5月で計5958件で、不正売買金額は計約5240億円に上る。
警視庁は不正アクセス禁止法違反や私電磁的記録不正作出・同供用の疑いを視野に捜査を進めている。【安達恒太郎】
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