「7月5日に大災害」の予言、なぜ広まった? 気象庁「デマ」と強調

2025/07/05 00:00 

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 2025年7月5日に大災害が起きる――。

 交流サイト(SNS)を中心に出回っている「予言」を巡り、気象庁の異例の対応が続いている。

 野村竜一長官は5月21日の記者会見で、「場所、時間、規模を指定して地震が起こると予知することについて、現在の科学では不可能。そのような言及は完全にデマであり、ウソです」と指摘。人々の不安を招くような情報に対して「非常に遺憾だ」と強い言葉で否定した。そして、「一般的に地震はいつ起こってもおかしくないので、常に対策は考えていただきたい」と冷静な対応を呼びかけた。

 ◇デマの根源は……

 “デマ”の根源は、漫画家・たつき諒さんの作品「私が見た未来 完全版」(飛鳥新社)だ。文中で大災害が起こるのは「2025年7月です」と予言し、あとがきでは、大災害が起きる日を、夢を見た日などから「2025年7月5日」と記し、「心構えのきっかけになってくれることを祈っています」とした。

 科学的根拠のない「予言」だが、その言説が広がったのには理由がある。

 作品は1999年に別の出版社(現在は解散)から刊行され、絶版となっていた作品を基に再編集し、21年に飛鳥新社から出版された。その絶版本の表紙に「大災害は2011年3月」と書かれていたことから、近年になって「東日本大震災を予言していた」などと注目されたのだ。

 ◇作者が予言を「軌道修正」

 気象庁が注意喚起する中で、作者のたつきさんは、6月に自伝「天使の遺言」(文芸社)を出版。作品中で<夢を見た日=何かが起きる日というわけではないのです>と記した。自身の「予言」を“軌道修正”し、日付の特定を否定したのだ。

 この意図について、毎日新聞は出版社を通じて著者に取材を依頼したが、断られた。

 だが、SNS上では不安の声が止まることはない。

 6月下旬から鹿児島県・トカラ列島近海で地震が相次ぎ、「予言」と結びつける投稿が目立つ。

 <6月からトカラ列島が揺れだして、予言が真実味を帯びてきて怖い>

 <トカラ列島の地震は火山噴火の前兆かも。たつき諒さん予言の7月とも奇妙な一致>

 さらにトカラ列島近海で地震が多発すると、その後に日本の別の場所で大地震が起きるという俗説「トカラの法則」に絡めた投稿も相次ぐように。<トカラ列島で地震相次ぐ。さらにトカラの法則が気になる 7月5日の予言が的中しないことを祈るしかない>

 一部の投稿はリツイートが繰り返され、多くの人たちの目に触れているようだ。

 ◇経済活動に影響

 一方で、国内外で観光業や経済活動に影響も出ている。

 日本政府観光局によると、香港からの5月の訪日客数(推計値)は19.3万人で、前年同月から11.2%減少した。

 香港の航空会社「グレーターベイエアラインズ」は4月、「予言」の影響で需要が急減していると判断し、5~10月の間に仙台便と徳島便をそれぞれ減便すると発表した。

 さらに7月に入り、「うわさ、予言などでインバウンドが激減した」などとして、徳島便を9月から「当面の間、全便を運休する」と決めた。後藤田正純・徳島県知事は「科学的根拠のない風評被害により運休となるのは大変残念だ」とコメントした。

 ◇気象庁、連日の会見

 気象庁の海老田綾貴・地震津波監視課長は7月2日の会見で俗説「トカラの法則」を否定し、南海トラフ巨大地震への影響も「おそらくない」とした。

 さらに3日夕、鹿児島県の悪石島で震度6弱の地震が発生したことを受けた緊急会見でも、「トカラの法則」を否定した上で、「今の科学技術で、いわゆる地震の予知はできません。ちまたで言われている(予言の)話はデマです」と改めて注意喚起した。【待鳥航志】

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