日本大重量挙げ部の奨学生の保護者が学費名目で現金をだまし取られた事件で、詐欺容疑で逮捕された同部元監督の難波謙二容疑者（６４）が、学費を学生側から競技部が代わりに受け取って学部に振り込む「代理受領」を大学側が禁止した後も続けていたことが捜査関係者への取材で判明した。警視庁捜査２課は３０日、別の奨学生側から現金を詐取したとして難波容疑者を詐欺容疑で再逮捕した。代理受領を悪用していたとみている。

　再逮捕容疑はコーチと共謀して２０２３年１２月、２４年度に入部予定の奨学生の保護者４人に、免除されている入学金や授業料の支払いを求める虚偽の請求書を送付し、計２６２万円をだまし取ったとしている。

　警視庁によると、難波容疑者は詐取した２６２万円のうち２５万円以上を飲食代や歯の治療費に充てたとされる。「寄付金として保護者の了解を得ていただいたお金だと思っていた」と容疑を否認しているという。

　捜査関係者によると、代理受領について、競技部を統括する大学の「競技スポーツ部」は、監督やコーチが集まる研修会でやめるよう繰り返し指示していた。

　重量挙げ部のコーチの一人は、指示された時期は「元理事長の田中英寿氏による脱税事件（２１年）など不祥事が相次ぎ、組織改革が進んでいた頃」という趣旨の説明をしているという。

　研修会には同部からはコーチが出席し、内容を難波容疑者に報告。難波容疑者は不正徴収をやめるよう複数のコーチから進言されたが無視していたとされる。

　２３年１２月～２４年４月には、学費や入部金のほか、同部への大学の補助金など計約１５００万円をコーチ陣から受け取り、自身の研究室に保管していたという。

　２４年５月ごろ、学費の振り込みで不審に思った保護者１人から問い合わせがあり、難波容疑者は約１００万円を返還。保護者と面会した難波容疑者らは「騒ぎになって自分たちがクビになれば、奨学生扱いを約束できなくなる」と伝え、口外しないよう求めたという。【山本康介、長屋美乃里】