東電旧経営陣への13兆円賠償取り消し 原発事故の責任否定 東京高裁
東京電力福島第1原発事故を巡り、東電の株主42人が旧経営陣に総額23兆円超を東電に賠償するよう求めた株主代表訴訟の控訴審判決で、東京高裁(木納敏和裁判長)は6日、旧経営陣に13兆円超の賠償を命じた1審判決を取り消し、株主側の請求を棄却した。株主側の逆転敗訴となった。
最高裁は2025年3月、業務上過失致死傷罪で強制起訴された旧経営陣2人の全面無罪を確定させている。今回の訴訟の1審判決が旧経営陣の個人責任を認めた唯一の判決だった。株主側は上告するとみられるが、世界最悪レベルの原発事故を巡って誰も個人責任が問われない可能性が高まった。
東電は08年、政府が公表した地震予測「長期評価」に基づき、高さ最大15・7メートルの津波が原発に襲来する可能性があると試算していた。訴訟では、巨大津波を予見できたか(予見可能性)、対策をしていれば事故を防げたのか(結果回避可能性)が争点となった。
22年7月の1審・東京地裁判決は、長期評価の信頼性を認め、津波対策が必要だったと予見可能性を認めた。また、建屋などへの浸水を防ぐ「水密化」をしていれば事故が防げた可能性は十分にあったと結果回避可能性も認めた。
その上で、東電が事故後に負担した廃炉・汚染水対策▽被災者に対する賠償▽除染・中間貯蔵対策費用――から賠償額を算出し、勝俣恒久元会長(24年10月に死去)と清水正孝元社長、武藤栄、武黒一郎両元副社長――の4人に連帯して約13兆円を賠償するよう命じた。
旧経営陣側は控訴審で、長期評価には多数の専門家から異論があり、信頼性はなかったとし、水密化など事故後の知見で責任追及すべきではないと主張した。一方、株主側は長期評価は信頼性のある知見で、水密化などの対策を先送りにしなければ事故は防げたと改めて主張していた。
避難者らが国に賠償を求めた訴訟では、最高裁が22年6月に対策をしても事故は防げなかったとして国の責任を否定する判決を言い渡している。【安元久美子】
◇立命館大法学部の山田泰弘教授(会社法)
◇旧経営陣の過失否定に違和感なし
1審判決は、旧経営陣が巨大津波の試算がありながら具体的な対策を長期にわたりとらなかった事実を重くみて、比較的緩やかに責任を認めた印象があった。一方で、東京高裁判決は「事故を防ぐには原発を止めるべきだった」と対策の内容を絞った。原発を停止するには実際にさまざまなハードルがあり、津波の試算の信頼性を慎重に検討した旧経営陣の対応を「対策の先送り」とは評価しなかった。旧経営陣の取るべき対策を厳密に検討した上で過失を否定した点に違和感はない。
◇東京電力福島第1原発事故
2011年3月11日に三陸沖を震源とするマグニチュード9・0の地震が発生。海抜10メートルの敷地に建つ原発に最大15・5メートルの津波が押し寄せた。非常用発電機などが冠水して全電源が喪失し、冷却機能が失われた原子炉の核燃料が溶け落ちる「メルトダウン」が起きた。原子炉建屋で水素爆発も起き、大気中に放射性物質が飛散した。福島県の7市町村には現在も居住が制限された「帰還困難区域」が残っている。福島県では25年2月現在で2万4644人が県内外に避難している。
◇東京高裁判決 骨子
・巨大津波の予見可能性を認めるには、原発の運転停止を正当化するほどの合理性や信頼性のある根拠が必要
・東電の想定津波の試算で用いられた地震予測「長期評価」は根拠として十分ではない
・旧経営陣に津波の予見可能性があったとは認められない。13兆円の賠償を命じた1審判決を取り消す
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