「出所後の不安」が再犯に 懲罰から更生へ変わる刑務所 三重の現場
「懲らしめ」から「立ち直り」へ――。刑務所のあり方が今、変わろうとしている。刑務官の厳しい視線が注がれ、一斉に刑務作業などを行うイメージもある中、個々の受刑者に向き合いながら、今まで以上に更生へ向けた取り組みが進められている。
主に初犯の受刑者が収容される三重刑務所(津市修成町)で服役する50代の男性受刑者は上下緑色の作業着で生活し、1日最大8時間の刑務業務に取り組みながら、懲役3年2月の刑期満了を待っている。「出所後は働けるなら、どの職種でも構わない。雇ってもらえるなら出所後すぐにでも働いて、今まで(社会から)脱線してきた分、社会に貢献したい」と、経験のある建設業にこだわらず、意欲を示す。
ただ、「仕事の不安が大きい。社会に向き合わず、投げ出したら、悪いことに足を踏み入れて苦しい生活に戻るかもしれない」とも。出所後の心配は、再犯率の高さが裏付ける。犯罪白書や三重刑務所などによると、2023年に刑法犯として検挙された18万3269人のうち、再犯者は8万6099人で全体の47%だった。
さらに再犯者の約7割が無職だったという。三重刑務所の担当者は「出所後に仕事や住む場所などがなく、孤独になって罪を犯すことが多い」と話した。
◇6月から「拘禁刑」に
再犯防止が課題となる中、6月施行の改正刑法で1日最大8時間の刑務作業が義務の「懲役刑」と任意の「禁錮刑」という従来の2種類を「拘禁刑」に一本化する。刑の目的を「改善更生を図るため、必要な作業、または指導を行う」と明示したことで刑務作業が義務ではなくなり、個々の特性に応じた指導などができる。
拘禁刑には、30日未満の「拘留」や刑期10年以上で4種類ある「長期処遇」、社会と接する施設で活動する「開放的処遇」など24種類が設けられる。薬物使用者には「依存症回復処遇」、知的・発達障害や精神障害を抱える人には「福祉的支援」もあり、社会復帰に向けて柔軟に処遇できる。
◇就労支援も
三重刑務所も更生のため、就労支援に力を入れる。週に数回の公共職業安定所(ハローワーク)の相談員による対応から、現在は日本財団の協力を得て、出所直後から働ける環境を作ろうと乗り出している。
企業が元受刑者の「親代わり」として職を提供する日本財団の「職親プロジェクト」の三重支部が昨年3月に発足したことで、昨年11月下旬には初めて職場体験が実施された。男性受刑者2人が四日市市内の産廃処理会社で作業員から説明を受けながら、パソコンの解体作業に従事した。
後日の感想文には「工場の仕事をしたことがなかった。また、解体作業をやってみたいし、ここに就職したい。今回はありがとうございました」と記されていた。やりがいを感じたことが伝わる文面に、受け入れた会社の社長も「作業を体験してもらうことで、仕事を身近に感じる。2人とも意欲的な感じがあってよかった」と振り返った。
社長は今後、元受刑者の採用を検討するという。「初めは不安の声もあったが、経営陣を含めて話し合って理解を得た。意欲があれが即戦力にもなる。刑務所内で複数回、面接会を開いて意欲のある人を採用していく」と話した。
三重刑務所ではほかにも、就職説明会や面接試験の練習なども行い、出所後の社会復帰に向けてサポートする。参加する受刑者も多く、就職説明会の参加者は「一人で職業安定所に行くのは不安。刑務所内で職業のことを知れるのはほっとするし、気持ちの面で違う」と話した。「職親プロジェクト」三重支部の副支部長で建設会社「善機工」の山下善弘社長(40)も「企業としても、どんな人がうちの会社に入りたいのか、事前にわかる。お互いメリットがあると思う」と指摘した。
「刑務所は罪を償うだけでなく、社会に戻るために訓練する場所にしないといけない」と三重刑務所の担当者は言う。「就職するだけでは意味がない。できる仕事、好きな仕事をマッチングさせることが大事になる」と過ちを繰り返させないため、個々の受刑者に向き合おうとしている。【渋谷雅也】
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