半数以上が外国人の町工場 スマホ翻訳の導入で「見えてきた」景色
京都府内で働く外国人が3万人を超え、過去最多になった。そんな中、課題となっているのが職場での「言葉の壁」だ。国の調査でも、半数近くの事業所が「コミュニケーションが取りにくい」ことを最大の課題に挙げる。だが、スマートフォンやパソコンのチャット機能を使った自動翻訳システムを活用して「壁」を乗り越え、職場環境を変えた町工場(まちこうば)が京都府長岡京市にある。
◇半数以上がベトナム人とタイ人の職場
金属加工を手掛ける「小林製作所」(長岡京市勝竜寺六ノ坪)。5月下旬に訪ねると、タイ人の従業員が作業をしながら、すぐ横に設置されたパソコンのディスプレーを見ていた。日本人従業員がスマホで打ち込んだ日本語の指示が、瞬時にタイ語に翻訳され、画面に併記されている。
また、ベトナム人従業員のスマホには、職場のグループでやり取りができるチャット機能を使い、母国語で日本人やタイ人の従業員に送ったメッセージがあった。受信した従業員のスマホの画面には、それぞれ日本語、タイ語に翻訳されたメッセージが併記されて届く。伝えたいことが互いの使用言語に翻訳されるため、スムーズに意思疎通ができる。
同社の従業員110人のうち、半数以上の60人がベトナム人とタイ人だ。技能実習生や特定技能外国人(1号)が多い。
同社は1955年創業。「多品種少量生産」で自動車部品を含むさまざまな機器の加工を請け負ってきた。元々は日本人従業員がほとんどだったが、会社の規模が大きくなるにつれ、従業員が不足。ハローワークや新聞折り込みでも募ったが、日本人の応募者はほぼいなくなった。そこで10年ほど前に技能実習生の採用を始めると、外国人従業員の数が増えていった。
小林裕明社長(46)は「みんな真面目で一生懸命に仕事を覚えようとしている」と外国人従業員の姿勢を評価する。ただ、言葉の違いによるコミュニケーションが「壁」になっていたという。
◇当初は意思疎通に苦労
日本人従業員との意思の疎通がうまくいかず、ミスを繰り返す。作業工程がずれ、納期も遅れる。「何を急いでいるのか、優先すべき作業は何かなど、意思疎通がうまくいかないと仕事にも大きな影響が出る」と小林社長。話の内容を理解できていないのに「はい」と言ったり、言葉が分からないため大事なことを発言しなかったりするケースもあり、日本人従業員とだけでなく、母国語が違う外国人同士でも障壁があったという。
ある会社の音声翻訳機器の導入なども考えたが、「対面でないと使えない」と断念。日本人従業員たちは身ぶり手ぶりで何とか伝えたり、簡単な日本語などを書いた紙を配ったりするなどし、言葉の壁で仕事や職場のルールに影響が出ないように続けてきた。
そんな悩みを抱える中、小林社長は東京ビッグサイトで昨年開かれた展示会で、スマホやパソコンの自動翻訳システム「カミナシ 従業員」を知った。
開発したのは、スタートアップ企業「カミナシ」(東京都)。現場管理者や総務部門、従業員間での情報や書類のやり取りを一つのサービス上で完結できるシステムだ。翻訳は約20言語に対応し、翻訳精度も高い。
◇従業員の声や思い「見えてきた」
小林製作所は今年1月、全従業員のスマホや作業場のパソコンにこのシステムを導入した。
日本語からベトナム語、タイ語から日本語、ベトナム語からタイ語など、スマホの所有者が母国語で連絡事項や指示、相談を入力すると、受け取る人はそれらが自身の母国語に翻訳されて届く。総務部門が連絡事項を全従業員に日本語で共有すると、ベトナム人やタイ人は母国語で理解できる。導入により、従業員同士で積極的に連絡や報告をし合う姿も見られ、職場の雰囲気が変わった。
金属の切断作業などを担当するベトナム出身で入社4年目のファン・ヴァン・チュオンさん(28)は「みんなと連絡しあえるようになった。指示や報告も理解でき、仕事も進んでいる」と笑顔。タイ出身のルンサックさん(29)も「すごく便利。問題が起きたり分からなかったりしたら、すぐ連絡できる。これまで聞けなかったことも聞けるようになった」。作業場所は違うが、2人もスマホで互いに連絡、相談し合う仲になったという。
「従業員のいろんな声や思いが『見えてきた』。職場の雰囲気も変わった。従業員の技術力の向上にもつながる」。小林社長はそう話す。「壁」を乗り越えることで会社の生産性は上がり、売り上げも増えているという。
府内で外国人労働者が最も多いのは製造業の約9400人(2024年10月末時点)で、全体の27%を占める。小林製作所の取り組みは、外国人労働者を受け入れる中小零細企業のモデルケースとなる可能性もある。【久保聡】
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