歯ごたえ三拍子 「幻のキノコ」博多すぎたけ、福岡から世界へ

2025/04/27 11:45 

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 九州を代表するキノコの産地として知られる福岡県大木町。ここに全国で唯一、生産されている品種がある。「幻のキノコ」といわれる「博多すぎたけ」。正式名はヌメリスギタケだ。県の特産品として誕生し、四半世紀を迎えた。

 甘みととろみ、シャキシャキとした歯ごたえの三拍子が特徴。天然物に出会うことが珍しいことから「幻の」といわれてきた。

 そんな中、県は食用キノコとして珍重されていたヌメリスギタケの人工栽培に向け、野生株の優良品種から育種の研究に着手。14年かけて2000年に商品化に結びつけた。

 人工栽培も簡単ではない。胞子を落とす量が他のキノコに比べて極めて少なく、温度や湿度、二酸化炭素濃度を管理する際の許容範囲が狭いからだ。

 人工栽培する業者はかつて3社あったが、現在はドリームマッシュ(大木町)のみ。同社の取締役、広松真輔さん(48)によると、培養から生産まで85日を要し、収穫はひと株ずつの手作業。培地に使う原料の配合にも試行錯誤し、同社が安定生産できるようになるまでにも9年を要したという。

 ドリームマッシュでは年間でシメジを500トン、博多すぎたけを10トン生産し、8割が卸し販売。その他を道の駅おおき(大木町)で扱うほか、道の駅内では博多すぎたけのもぎ取り体験もできる。

 オンラインで運営する「博多すぎたけ商店」は、賞味期限1年のカット冷凍品やフリーズドライにしたみそ汁などを購入できる。冷凍品はパスタや炒め物の具材として重宝する。

 2年前から香港の一流ホテルでも使われ、年内にはタイ・バンコクにも流通させる予定。広松さんは「三つの食感を同時に楽しめるのは他にはない。ぜひ味わってほしい」。福岡の特産品が世界にじわりと広がっている。【井上和也】

 ◇ドリームマッシュ

 1998年に農事組合法人として設立、2025年2月に株式会社化。福岡県大木町の本社工場で博多すぎたけとシメジを栽培。同県筑後市の筑後工場は商品センターとして冷凍食品の加工や発送を担う。本社(0942・65・9122)。

毎日新聞

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