電動キックボードシェアサービス 浜松で導入1カ月 新たな足に期待と不安

2025/03/27 10:00 

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 浜松市中心市街地で、静岡県内初となる電動キックボードのシェアリングサービスが始まって26日で1カ月が経過した。手軽にまちなかの移動をサポートする新たな足として、若者を中心に利用が広がる一方で、市民からは歩行者の安全確保や利用者の運転マナーに不安の声も挙がっている。
 「意外とスピードが出る。乗ってみると楽しい」。中央区の20代男性はJR浜松駅前近くのコンビニから、約700メートル先の自宅近くまで電動キックボードで走った。初めての乗車だったが、すぐに操作に慣れた様子で「便利なのでまた使ってみたい」と声を弾ませた。
 サービスを運営するLuup(ループ、東京)は2月下旬、電動キックボード50台、電動アシスト自転車80台をJR浜松駅周辺の各地にあるポート(駐車場)に設置。利用の際に使うアプリは全国で400万ダウンロードを超え、市内でも順調に利用が広がっているという。担当者は「今後、ポート数を増やしていく。生活の中で安全にループを利用いただきたい」と話す。
 電動キックボードの安全性や利用者のマナーを心配する声もある。
 繁華街でサイクルショップを営む浜松商店界連盟の御園井智三郎会長(64)は「浜松の交通環境にあまり適していない」と指摘する。「まちなかは人の往来が激しく、専用の道路がないなど、自転車や電動キックボードと人のすみ分けができていない。歩行者の安全を守れるのだろうか」と懸念する。
 浜松中央署によると、管内ではこれまでに電動キックボードの交通違反の摘発は信号無視の1件で、けが人はいないという。多田義人交通課長は「電動キックボードは新しい枠組みで、ルールが複雑。しっかりと理解した上で使用してもらいたい。啓発活動や取り締まりも積極的に行っていく」と述べた。
■静岡新聞社記者・試乗ルポ 大型車の風圧に身の危険
 JR浜松駅前から、約2キロ離れた商業施設まで、記者が電動キックボードに乗って移動してみた。
 ハンドルについたアクセルボタンを親指で押し込むと、数秒で制限速度の時速20キロ近くに達した。静かなモーター音と心地よく風を切る音。初めて乗った電動キックボードの操作は、とても簡単で、すぐに運転に慣れた気がした。 ただ、車の交通量の多い目抜き通りに出ると、一転して背後から次々と抜き去る乗用車に恐怖を感じた。すぐ横を通り抜ける大型車の風圧に身の危険を感じ、ヘルメット着用の必要性を感じた。
 歩行者の多い市街地は最高速度6キロの低速モードで進んだ。通常モードに比べると、早足で歩いた程度のスピードでじれったく感じることも。昼間のまちなかは人通りも少なく、ぶつかりそうになる場面はなかった。交通ルールの順守や周囲の歩行者への気遣いは欠かせない。
 20分程度の利用だったが、交通量の多い道路では利用者自身の安全確保に課題があるように見えた。「努力義務」とされているヘルメットの着用を義務づけた方がよいとも感じた。
<電動キックボード> 電気モーターで走る1人用の車両。道交法の改正により、最高時速を20キロ以下に抑えるなど一定の要件を満たす場合は運転免許が不要で、16歳未満は運転禁止。ヘルメット着用は努力義務。警察庁のまとめによると、区分される「特定小型原動機付自転車」の交通違反件数は制度が導入された2023年7月から24年末までで4万8376件。423件の交通事故が発生し、死者数は1人、負傷者数は436人。
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