男性の育休取得拡大へ 企業が環境模索 4月から制度改正 中小企業は人繰り対応課題

2025/03/26 10:00 

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 仕事と子育ての両立に向けて、静岡県内企業が男性従業員の育児休業の取得と復職しやすい環境づくりを進めている。国は4月から制度改正で給付金を拡充し、育休取得率公表対象を現行の従業員(常時雇用)1千人超から300人超に広げる。社会的な機運の高まりで育休取得率が高まる中、中小をはじめとする人手不足に悩む企業は人繰りの対応への模索が続いている。
 2月下旬、浜松市内で開かれたスズキ社員らの育児休職者向け交流会。男性も社員の配偶者含む15人が参加した。4月まで半年間の育休を取得中という開発部門の男性社員(28)は「職場に取得した先輩がいて、上司も理解があった。言い出しにくい雰囲気はなかった」と話す。子育ての“先輩”社員に、復帰後の働き方について質問を重ねた。
 スズキは男性が社員の9割を占める中で2023年度は男性289人、女性が101人が育休を取得。男性の取得率は63・1%(出生時育児休暇のみは含まず)と21年度の17・7%から上昇した。複数月の取得者も目立つという。部署内で仕事を振り分けたり、代替する担当者を確保したりと「手探りで進めている部分もある」(人事担当者)。
 24年の男性育休取得率が84・2%だったヤマハ発動機も休業前の両立支援セミナーを通じて制度理解を促し、男性育休取得者の経験談を伝えている。
 スズキ、ヤマハ発動機も担当者はともに「取得率だけを重視していない」「家庭環境が異なる中で、あくまで取得を希望する人をサポートしている」と話す。
 厚生労働省の調査によると、企業の23年度の男性の育休取得率は前年度より13ポイント増えて初めて3割を超えた。一方、別の調査で制度を利用しなかった男性の理由では「収入を減らしたくない」が最多で、「職場の無理解」「自分にしかできない仕事があった」なども上がったという。人員が限られる中小企業では、円滑な事業活動や他社員に加わる負担へのケアも課題になる。
 従業員200人未満のソフトプレン工業(浜松市中央区)の前嶋文明会長は「(社員が職場を離れることで)一時的に生産性低下やコストアップが生じるかもしれない。ただ、人材育成など長い目でプラスになると考え、乗り越えていく」と話す。

 <メモ>静岡労働局は4月からの男性の育休取得率の公表義務対象拡大に伴い、企業に対する改正法関連のセミナーや訪問の際の説明を進めている。雇用環境・均等室の担当者は「企業の人材確保、定着につながる利点もある。各企業の実情に即して、職場風土の改善や取得促進を図ってほしい」と話す。取り組み事例を発信する厚労省運営のサイト「両立支援のひろば」の活用も呼びかける。
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