袴田巌さんに静岡県警本部長謝罪「58年間、言い尽くせないほどのご心労とご負担を」 浜松市の…

2024/10/22 07:51 

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 現在の静岡市清水区で1966年、みそ製造会社の専務一家4人が殺害された事件のやり直しの裁判(再審)で袴田巌さん(88)の無罪判決が確定したことを受け、県警の津田隆好本部長は21日、浜松市内で袴田さんと面会し、「58年間の長きにわたり、言葉では言い尽くせないほどのご心労、ご負担をおかけし、申し訳ありませんでした」と謝罪した。捜査当局が直接陳謝するのは初めて。
 中央区の袴田さん宅を訪ねた津田本部長は、姉ひで子さん(91)や支援者らが同席する中で「今後より一層、緻密かつ適正な捜査に努めてまいります」と述べ、2分ほど頭を下げた。ひで子さんは「私たちはもう運命だと思っています。今更、警察に苦情を言うつもりはありません。わざわざおいでくださりましてありがとうございました」と応じた。
 直前に警察幹部が謝罪に来ることを知らされたという袴田さんは終始緊張した面持ちで話を聞いた。拘禁症状が残り、意思疎通が難しい中、津田本部長に「権力を持ったらグズグズ言わない。そう心得ております」などと語りかけた。
 津田本部長は謝罪後の報道陣への取材に「強制的、威圧的な取り調べがあったことは誠に申し訳なく思っている」と答えた。
 謝罪を受けたひで子さんは「誠心誠意謝っていただいた。(袴田さんも)謝りに来たことが分かっているのかなと感じた」と振り返り、「これでだんだんと『死刑囚じゃないんだ』と思うようになっていくと思う」と願った。
 面会後に支援者が撮影した動画では、受け止めを問われた袴田さんが「権力は一般の国民の言い分をどう認めるかという、それだけのことなんだね」と話し、ひで子さんは「謝ってくれたの分かったよね。あんたはもう死刑囚じゃないから、安心しな」と伝えた。
 袴田さんは66年に県警に逮捕され、80年に死刑が確定。再審で静岡地裁は先月26日に捜査機関の証拠捏造(ねつぞう)を指摘し、無罪判決を言い渡した。検察が上訴権を放棄したことにより、判決は10月9日に確定した。
 ■ 謝罪は「組織として決める」 静岡地検次席検事
 再審で無罪判決が確定した袴田巌さん(88)への謝罪の判断について、静岡地検の小長光健史次席検事は21日、取材に対し「組織として決めることになる」と述べた。県警本部長の謝罪は「承知している」とした上で、「一般論として(警察と検察は)それぞれどう対応するのが一番いいかを考えている」とも述べた。
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