期日前投票所の縮小相次ぐ 商業施設やバス準備できず…投票率に懸念

2026/01/28 07:00 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 衆院選の期日前投票が28日、始まった。だが今回、期日前投票所の設置数を縮小する自治体が相次ぐ。2024年の前回衆院選では投票者の3人に1人が期日前投票を利用しており、専門家から「投票率にも影響するのではないか」との懸念の声が上がる。

 ◇投票の4分の1占めた場所も……

 千葉県柏市のショッピングモール「セブンパーク アリオ柏」では初日の28日から期日前投票所が設けられ、エコバッグを手にした客らが「投票所入場券が届いていないけど、投票できますか」と尋ねながら続々と中に入っていった。

 柏市選挙管理委員会は「短期決戦の選挙だけに、有権者が普段から訪れる場所で投票できることをアピールしたい」とメリットを説く。

 近年、買い物ついでに投票してもらおうと商業施設に期日前投票所を設ける動きが広がっている。総務省のまとめによると、前回衆院選では全国に394カ所置かれた。ところが今回は解散が急だったうえ、投開票までの期間も戦後最短の16日間とあって、準備が間に合わない選管が目立つ。

 「イオンモールでは期日前投票はできません」。商業施設や自治体のホームページには、これまでの国政選挙では投票できた商業施設に期日前投票所を設けないとする注意喚起が散見される。

 茨城県茨城町は「イオンタウン水戸南」に設置予定だった期日前投票所について「町として準備が間に合わない」との理由で取りやめた。

 25年秋の知事選ではイオンと町役場に期日前投票所を置き、このうちイオンで全投票者の4分の1にあたる24%が投票した。

 選管の担当者は期日前投票について「町役場で投票するよう周知を図っていくしかない」と話す。

 ◇移動期日前投票所も断念

 水を差すのは商業施設での設置だけではない。

 「無理です。こんな急なスケジュールではとても段取りできません」

 福島県南相馬市選管の担当者は言う。

 これまでの国政選挙では、投票箱を載せたバスを移動期日前投票所とし、市内の三つの高校に1日ずつ派遣。生徒たちに1票を投じてもらっていた。10代の有権者に選挙への関心を持ってもらう狙いもあった。

 しかし今回はバス会社と折衝する時間が足りず、車両を押さえられなかった。同様に短期決戦だった前回衆院選に続く見送りとなり、担当者は「バスでの期日前投票には準備に2~3週間はかかる。通常なら解散の雰囲気が見え始めると徐々に準備するが、今回は急すぎた。本当は高校生に投票へ行く習慣を身につけてもらう機会にしたかった」と話す。

 真冬の選挙で設置が困難になったケースもある。福島県柳津町は移動期日前投票所の設置見送りを決めた。前回衆院選では10人乗りのバンを使い、町内13カ所を回った。足が弱って投票所まで行くのが難しいお年寄りが投票できるようにしたもので、131人が投票した。

 しかし、町は日本有数の豪雪地帯で移動期日前投票所を設置するためには、バンを止める場所の雪かきが必要になる。今回の選挙は当初予算案の編成時期でもあり、担当者は「時間も人も工面できなかった。雪が降るなかで有権者を車の外に待たせる可能性もあって取りやめた」と話す。

 ◇キャンパスでの設置にも影響

 影響は大学キャンパスでの投票にも出ている。自治医科大(栃木県下野市)は16年参院選から学内に期日前投票所を設置していたが、今回は2月4日の入学試験と日程が重なり、中止を余儀なくされた。

 前回衆院選では540人が投票しており、大学の担当者は「学生が身近な場所で選挙に触れる大切な機会となっていただけに残念」と話す。

 期日前投票ができる期間は、選挙の公示日翌日から投開票の前日まで。今回でいえば28日~2月7日だ。期日前投票の利用者は増加傾向にあり、前回衆院選の小選挙区では2095万5000人に上った。投票者総数の37%にあたる。

 投票行動に詳しい淑徳大の矢尾板俊平教授(総合政策論)は「短い選挙日程のため、自治体の選挙担当者は投開票日当日を乗り切るだけでも大変だと聞いている。候補者討論会や投票への啓発活動までは、とても手が回らない。急な選挙日程がこれまでの投票率向上の取り組みにも影を落としかねない」と話した。【木村敦彦、酒造唯】

毎日新聞

政治

政治一覧>

注目の情報