拭えなかった「漠然とした不安」 参政党の熱狂の裏に危うさ 埼玉
街頭の熱狂とは対照的だった。参院選投開票日の20日夜、埼玉県飯能市内にある参政党新人、大津力氏の事務所は閑散としていた。当選確実が報じられた午前2時前に約10人で万歳三唱したが、それまでは報道陣を除いて支持者の姿はほとんどなかった。「ネットで投開票を見る支持者が多い」と陣営関係者。SNS(交流サイト)を駆使して無党派層に浸透した政党らしい議席獲得の瞬間だった。
「勝因は外国人問題を全面的に押し出したこと」と大津氏は語る。多くの外国人が暮らす県南部での演説では「外国人がどんどん増えているじゃないですか。地域住民、本当に困ってるんですよ」と問題提起した。党のキャッチコピーは「日本人ファースト」。「外国人優遇」や「行き過ぎた移民受け入れ」の是正を訴えた。
陣営は、外国人政策に関する訴えが有権者に「刺さった」ことが最大の勝因とみているという。確かに、大津氏は地元飯能市と、人口の約8%を外国人が占める川口市で得票数がトップだった。長年にわたって築き上げてきた自民の強固な地盤を突き崩した形だ。
◇街頭演説で聞こえた「危機感」
街頭演説に訪れた30代女性に話を聞いた。「注目しているのは外国人問題。政治に無関心だったが、街に外国人が目立つようになって危機感がある。ネットでも事件などについて色々書かれていて……」
外国人による犯罪で県南部の治安が急激に悪化したことを示すデータは乏しい。女性自身も外国人による被害に遭ったことはないという。一方、同市の外国人数は増加傾向にあり、自治体には文化の違いなどに基づく生活トラブルの相談が寄せられる。外国籍住民による事件が個別に報じられることもある。
女性の言葉の背景には、国が進める外国人の受け入れ拡大などについて住民が感じている「漠然とした不安」があるように思えた。裏を返せば、そうした不安を払拭し共生を目指すための取り組みや説明を、国や既存政党は十分に尽くすことができてこなかったのではないか。
今回の参院選では外国人受け入れなどに関して「共生」ではなく、強い言葉で「規制」を訴えかける公約や演説が相次いだ。ある川口市議は「地元で外国人住民との生活トラブルがあるのは事実。地道に解決を目指すしか無い問題だが、選挙で争点化されたことで地域の排外感情があおられるのではないか」と憂慮する。
◇「風」だけではない
急浮上の新興勢力として扱われがちだが、参政の躍進を支えたのは「風」だけではなさそうだ。県内には11人の地方議員がいて、ポスターは都市部だけでなく郊外にも貼られていた。各地で歴史や食品添加物などをテーマにした数百人規模の講演会を開催するなどして、党勢拡大にも取り組んできた。
「毎日、各界の専門家からのコラムや動画の提供」「気軽に学びたい方向けのコース」。ウェブサイト上で月額制サービスさながらの形態で党員やサポーターを募集し、都議選のあった6月には党員が急増したという。陣営関係者は「各地の党員の草の根的な活動が票につながった」と胸を張る。
選挙戦が進むにつれて、街頭には比較的若い年齢層の聴衆が増えているように見えた。大津氏は演説で、日本に干渉して国益を損なうという「日本の背後にある勢力」「国際金融資本」などへの批判も訴えた。同党の神谷宗幣代表編著の出版物でもこうした世界観が展開され、専門家などからは「陰謀論」との指摘が相次ぐが、聴衆は拍手を送った。
「何が起こっているのか。いつまで続くのか。どこまで拡大するのか。全く分からない」。参政の勢いを目の当たりにした他陣営の候補がぼうぜんと話したのが印象的だった。
◇見据える先に首長選
選挙期間中、神谷代表の街頭演説は差別につながりかねない発言が度々問題視された。党が掲げる憲法草案には「国民主権」が明記されておらず批判を集める。党が掲げるビジョンと言葉には危うさも感じるが、大津氏は「自分の選挙に精いっぱいで神谷氏の発言はよく確認できていない」「憲法草案はあくまでもたたき台。これを機に議論が深まればいい」と話す。
参政党の熱狂は埼玉に、国に、何をもたらすのか。神谷代表は投開票前日、群衆を前にこう語った。「(今後の)自治体の首長選挙、埼玉県を皮切りに始めていこうと思います」【板鼻歳也、田原拓郎】
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