トランプ氏、AI巡る大統領令見送り 「中国との競争の妨げに」

2026/05/22 10:32 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 トランプ米大統領は21日、この日予定していた人工知能(AI)を巡る大統領令への署名を見送ったと述べた。AI業界に対する政府の監督権限強化などが盛り込まれると報じられていたが、トランプ氏が「中国との競争で優位に立つ状況の妨げになる」と難色を示した。米新興企業アンソロピックの高性能AIモデル「クロード・ミュトス」の登場で各国が対応を迫られる中、急成長する業界への対応を巡って政権内で意見が割れているという。

 米欧メディアによると、大統領令には、高度なAIモデルが公開される最大90日前から連邦政府による自主的な審査の実施が盛り込まれる見通しだった。財務省や国防総省傘下の国家安全保障局(NSA)、ホワイトハウスの担当部局が審査に関与すると見込まれていた。また、トランプ氏は銀行や病院など社会・経済に不可欠な分野が持つネットワークで防御を強化するため、政府に対して高度なAIモデルの活用を指示する計画だった。

 ホワイトハウスは21日午後に大統領令の署名式を予定しており、グーグル▽メタ▽マイクロソフト▽オープンAI▽アンソロピック――など主要テクノロジー企業の幹部が招待されていた。同日午前に米メディアが署名見送りを伝えた。

 トランプ氏は同日昼、記者団に対し、大統領令の「内容の一部」を懸念したため署名を延期したと説明した。AIを巡る覇権争いで米国が中国をはじめ世界をリードしており、多大な利益を生み出していると強調。大統領令が「そのリードを阻むようなことはしたくない」と述べた。

 トランプ政権はこれまでAI規制に慎重な姿勢をとってきた。ただ、ミュトスが4月に公表されると状況は一変した。セキュリティー上の脆弱(ぜいじゃく)性を見つけ出す能力が格段に高いミュトスはサイバー攻撃に悪用されれば、各国の経済や社会システムの脅威となるリスクがある。そこで一定の監督体制や対応策の導入が検討されることになった。

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、バンス副大統領やベッセント財務長官はサイバー防御のリソースが十分ではない地方の銀行や病院の保護に主眼を置いている。一方、政権の特別顧問としてAI政策などを担当するベンチャー投資家のデービッド・サックス氏らはAIの経済的利益がリスクを上回ると主張。ビジネス重視の立場からAI規制に否定的な見解を示しており、ホワイトハウス内で意見が割れている。【ワシントン浅川大樹】

毎日新聞

国際

国際一覧>

注目の情報