「恐怖感じる」 湾岸諸国のアジア人労働者、相次ぎ死傷 イラン戦闘

2026/03/10 16:38 

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

 イランと米国、イスラエルの戦闘が続く中、湾岸アラブ諸国で働く外国人労働者が相次いで死傷している。

 湾岸にはアジアからの労働者が多く暮らし、建設や小売りなど幅広い分野を担う。戦闘の激化を受け、一部の国は労働者を帰国させており、双方の経済に深刻な影響が及ぶ可能性が出ている。

 クウェートの自動車整備工場で働く30代のインド人男性は5日、取材に対し「無人機攻撃に恐怖を感じている。航空便がない現状では帰国できないが、できるだけ普段通り振る舞おうとしている」と語った。男性は勤務先から、詳しい状況を語らないよう指示されているという。

 米イスラエルに追い詰められたイランは、国際社会による停戦圧力を狙い、湾岸諸国などのインフラに波状攻撃をかけている。

 クウェートの国際空港や、アラブ首長国連邦(UAE)の商業都市ドバイのホテルなども一部破壊された。中東の衛星テレビ「アルジャジーラ」によると、これまでにUAEではパキスタン、ネパール出身などの労働者4人が死亡。8日にはサウジアラビアで、バングラデシュ出身の労働者ら2人が死亡した。

 ◇対応追われるアジア諸国

 資源が豊富な湾岸諸国では、自国民は待遇の良い公務員などに就く一方、肉体労働はアジアの労働者に依存する。国際労働機関(ILO)によると、湾岸諸国には約2400万人の外国人労働者が暮らし、労働力の4割を占める。UAEやカタールでは人口の約9割が外国人だ。

 国民を送り出しているアジア諸国は対応に追われている。

 インド出身者は約900万人が湾岸諸国に住み、8割近くがUAEとサウジアラビア、クウェートに滞在する。

 交戦が激化する中、インド政府は帰還を求める人の移動手段を確保するため、航空各社に特別便を就航するよう要請。7日までに、旅行者を含めた5万2000人以上が帰国した。

 ただ、海外で働く労働者からの送金は、インドの貴重な外貨獲得の手段だ。なかでもUAEは米国に次ぐ送金元とされる。戦闘が長引けば、インド経済に与える影響も懸念される。

 フィリピン出身者は約240万人が中東に暮らし、家事労働や介護に従事する。

 地元メディアによると、5日にはUAEから労働者ら299人が帰国したが、政府への帰国要請は同日時点で約2000人に達している。ただマルコス大統領は、中東などで空域閉鎖が続く中での避難は「非常に危険」として、現地にとどまるよう呼びかけている。

 一方、インドネシア外務省は7日、ホルムズ海峡でUAE船籍の船舶が6日に沈没し、インドネシア人乗組員3人が行方不明だと発表した。報道によると、乗船していたフィリピン人1人も行方不明だという。

 ホルムズ海峡は精鋭軍事組織・イラン革命防衛隊が船舶への攻撃を繰り返している。

 今回の沈没原因は不明だが、同省はこれを受け、中東在住の国民に最大限の警戒を呼びかけた。また、政府は帰国希望や賃金未払いなどの相談に対応する窓口を拡充する方針だ。

 労働者以外にも影響は広がる。イスラム教の聖地があるサウジアラビアを訪問したインドネシア人約6万人は、同国に留め置かれている。政府は宿泊施設の提供を検討する一方、今後渡航する予定の巡礼者に延期を強く求めた。【エルサレム松岡大地、ニューデリー松本紫帆、バンコク国本愛】

毎日新聞

国際

国際一覧>

注目の情報