イラン戦闘で狙われ始めた「水」 中東で未曽有の人道危機も
イランと米・イスラエルの交戦で、双方が「水」を標的にし始めた。
砂漠地帯が多い中東では、水は希少な物資だ。水資源への攻撃が拡大すれば、膨大な人口が渇きに苦しむことになる。
「米国は露骨に絶望的な罪を犯した」。イランのアラグチ外相は7日、X(ツイッター)で、ホルムズ海峡のゲシュム島で海水の淡水化施設が爆撃され、30の村で水の供給に影響が出たと明らかにした。
イランは世界的に見ても、水不足が深刻な国だ。近年は歴史的な干ばつに苦しんでおり、昨夏は水資源の節約のため、テヘラン州で人々の活動を抑える「祝日」が設けられたほどだ。
英紙ガーディアンなどによると、首都テヘランの主要な水源である五つのダムは、2025年11月時点で貯水量が11%に減っていた。昨年末から今年1月にかけて拡大した反政府デモの背景には、物価高騰などに加え、水不足もあったとの指摘がある。
こうした中、水資源が標的にされれば、国民生活はさらなる混乱に陥る。アラグチ氏は「インフラへの攻撃は危険で深刻な結果をもたらす。先例を作ったのはイランではない。米国だ」と非難した。
イランも報復に出た。バーレーンでは8日、イランの無人機攻撃で淡水化施設が破損。死傷者はなく、稼働にも影響はなかったが、イランも同様の攻撃が可能だとするメッセージを送った形だ。
湾岸諸国も水資源は脆弱(ぜいじゃく)だ。中東メディアによると、湾岸諸国には400カ所以上の淡水化施設があり、飲料水の多くを依存している。その依存度はサウジアラビアが約7割、オマーンとクウェートは約9割に上る。バーレーンでは公的機関の給水のほぼ100%を淡水化施設に頼っているとされる。
イランのミサイル・無人機攻撃では各国で石油施設や港湾に被害が出ているが、水インフラを集中的に狙われると、致命的な被害となる可能性がある。
国際的な地政学リスクを分析する米調査機関ユーラシア・グループは1月、今年の「10大リスク」の一つに「水の武器化」を挙げた。
すでにロシアのウクライナ侵攻やパレスチナ自治区ガザ地区の戦闘では、水インフラを標的にした攻撃が起き、人道危機を招いてきた。イランを巡る戦闘で同様の事態になれば、中東は未曽有の「渇水」に襲われる。【カイロ金子淳】
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