「デモの返事はいつも銃」願うのは… 複雑な在日イラン人の胸中
米国とイスラエルが2月28日にイランへの軍事攻撃を始め、10日がたった。現地ではミサイルなどにより1300人以上が死亡したとされる。北海道内に住むイラン人は母国の家族や友人の安否を案じながら、同じような言葉を口にする。「戦争は絶対に反対だけど……」としつつ、国の体制転換を切望している。
◇イラン・イラク戦争に出征
36年前に来日し、札幌市を中心に中東の肉料理「ケバブ」のキッチンカーを営むモハマッド・ホセイニ・ホセインさん(58)はネットニュースでイランへの軍事攻撃を知った。その瞬間、「国民が自由に近づく」と思った。
イランでは1979年のイスラム革命で王政が転覆。イスラム教の指導者が実権を握り、服装規定などの教義に基づく統治が47年間続いた。
首都テヘランに住んでいたホセインさんは兵役のため、80年に始まったイラン・イラク戦争(88年終戦)に出征。多くの同級生が死亡した。「普通の暮らしはできない」。兵役が終わると、東京の友人を頼って出国した。
昨年12月末以降、イランでは通貨暴落や景気悪化に抗議するデモが拡大。参加者を「神の敵」とした政府の弾圧により少なくとも数千人が死亡した。
ホセインさんは「戦争は反対だけど、こういう他国の介入がなければイラン政府は弾圧をやめない。日本の人には分かってほしい」と願う。
その一方で、ホセインさんはテヘラン在住の母(91)らが無事か、気が気でない。軍事攻撃の6日前まで頻繁にテレビ電話で話していた。「普通に暮らすことだけを願っているのに、なぜこんな思いをしないといけないのか」。一般市民は誰も死なないでほしいと願う。
◇「どうしたら良かったのか」
札幌市中央区でペルシャじゅうたん店を営むタスリミー・ホジさん(58)は今月4日、地元ラムサール市の友人と3分間だけネット通話できた。テヘランに住む家族がラムサールに避難したと知り、胸をなで下ろした。
イラン政府が核開発を諦めない中、戦争はいつか起こると思っていた。
「デモの返事はいつも銃だった」。今のイランで、国民に体制転換はできないと指摘する。中東地域で大国のイランを攻撃してこなかった米国が翻意した背景に、「トランプ米大統領がイラン国民の考えを知って(方針が)変わったのだろう」と推測する。
過去の王政時代にも問題があったとしつつ、「比べものにならないほど自由があった。自分が生きている間に昔のような国に戻ってほしい」と望む。
戸惑いもある。「戦争になって喜ぶなんて初めて。この形で良かったのか私も分からない。でも、どうしたら良かったのか」。複雑な胸の内を吐露した。【片野裕之】
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