イスラエルのカタール空爆 米政権は9日朝に攻撃把握も「遅すぎた」

2025/09/10 17:48 

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 イスラエル軍は9日、パレスチナ自治区ガザ地区のイスラム組織ハマスの幹部を殺害するため、カタールの首都ドーハにある住宅を空爆した。ドーハにはハマス政治局の事務所があり、カタールはイスラエルとハマスの停戦交渉を仲介してきた。ハマスの声明などによると、ハマス幹部ら5人と地元警察官1人が死亡した。カタールのムハンマド首相兼外相は「国家によるテロだ」と非難した。

 イスラエルのネタニヤフ首相は9日の声明で、エルサレムで8日に6人が死亡した銃撃事件を受けて軍事作戦の準備を始めたと説明した。イスラエルがカタール国内でハマス幹部を狙った暗殺作戦を実施したのは、2023年10月にガザの戦闘が始まって以来、初とみられる。ムハンマド氏は仲介を続ける意向を示したが、今後の停戦交渉に影響を及ぼすのは必至だ。

 空爆があったのは、ドーハの人口密集地。爆発は複数回あり、上空には大きな黒煙が上がった。ドーハに住む男性(39)は毎日新聞の取材に「家にいたら、すぐ近くで爆発があり、窓から煙が見えた」と語った。

 アラブメディアなどによると、ハマスの交渉団を率いていた政治部門の副局長、ハイヤ氏ら複数の幹部が標的になったとみられる。ハマスによると、ハイヤ氏は生存しているが、ハイヤ氏の息子や側近ら5人が死亡したという。

 トランプ米大統領は9日、自身のソーシャルメディアで、空爆について「非常に残念に思っている」と表明。ハマスの排除には理解を示しつつ、「米国の緊密な同盟国であり、主権国家のカタールを空爆することは米国とイスラエルの目標を前進させることにはならない」と指摘した。

 ガザの戦闘を巡っては、米国がハマスに新たな停戦案を提示しており、ハマスが協議している最中だった。ハマスは今回の攻撃を受け、態度をいっそう硬化させる可能性がある。

 ロイター通信などによると、イスラエルは空爆を事前に米国に通知していた。トランプ氏の投稿では、米政権は9日朝に米軍からの連絡で攻撃を把握。米国のウィットコフ中東担当特使がカタール側に知らせたが、「攻撃を阻止するには遅すぎた」という。カタールも米国から通知を受けたのは、攻撃の10分後だったとしている。

 米紙ウォール・ストリート・ジャーナルによると、イスラエル軍はミサイルを発射する数分前に米側へ攻撃を伝えたが、正確な標的の場所は明かさなかった。複数の米メディアは、米政府高官がこうしたイスラエルの対応に「激怒」したと報じた。

 イスラエルはこれまでも国外でハマス幹部の暗殺を繰り返してきた。24年7月にはイランの首都テヘランを訪問していたハマス最高指導者、ハニヤ氏を暗殺。10月にはハニヤ氏の後を継いだガザの指導者、ヤヒヤ・シンワル氏を殺害したほか、今年5月には弟のムハンマド・シンワル氏もガザ地区で空爆により殺害した。また、レバノンなどでもハマス幹部を狙った空爆などを繰り返している。【カイロ金子淳、エルサレム松岡大地、ワシントン松井聡】

毎日新聞

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