叫ぶ観客、選手は退場要求 抗議デモも ウィンブルドン会場で何が

2025/07/04 18:59 

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 英国で開催中のテニスのウィンブルドン選手権に、国際紛争の影響が表れている。観客がロシアによるウクライナ侵攻に絡んで叫び声を上げ、選手から退場を求められたほか、パレスチナ自治区ガザ地区での戦闘を巡り、大会の公式パートナーの大企業に対する抗議デモも起きた。

 「彼を退場させて。彼が出ていかないとプレーを続けられない。もしかしたら彼はナイフを持っていて、後で襲ってくるかもしれない」

 開幕日の6月30日、女子シングルス1回戦の試合中、ユリア・プチンツェワ選手(世界ランキング33位)が主審に対し、ある男性観客についてこう訴えた。

 米スポーツ専門メディア「ジ・アスレチック」などによると、男性はプチンツェワ選手がサーブを打つ合間に、ウクライナ侵攻に関してロシア語で何かを叫んだ模様だ。内容は不明だが、ロシア出身のプチンツェワ選手(現在はカザフスタン国籍)に向けた攻撃的な言葉だった可能性がある。

 大会主催者は翌日、「セキュリティー担当者が対処した」とだけ説明した。英BBC放送によると、男性は自発的に観客席から去ったとみられるという。

 この試合でストレート負けしたプチンツェワ選手はBBCに、「彼(男性観客)は政治的なことを叫んでいた。私は政治から距離を置いているので、試合中に政治的なことを言われたくない」と語った。

 一方、同じ日に会場の脇では、大会の公式パートナーである英金融大手バークレイズに抗議するデモがあった。バークレイズについては、イスラエルに武器を供給する複数の防衛企業の株式を20億ポンド(約4000億円)分以上保有しているなどと、市民団体は指摘する。

 デモでは数十人が「パレスチナに対するイスラエルの犯罪への資金提供をやめろ」と書かれたプラカードなどを掲げ、「ジェノサイド(大量虐殺)で告発する」とシュプレヒコールを上げた。昨年も同様のデモが開幕日に実施された。

 イスラエル軍とイスラム組織ハマスの戦闘が始まった2023年10月以降、バークレイズは支店に赤い塗料をかけられるなど、頻繁に抗議運動の標的になってきた。

 バークレイズはウェブサイトで「顧客の指示や要望に応じて株式の売買をしている。私たちはそうした(防衛)企業に金融サービスを提供しているが、『株主』や『投資家』ではない」と説明している。【ウィンブルドン福永方人】

毎日新聞

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