「平和を我らに」と国連事務総長 イラン・イスラエル安保理会合

2025/06/21 07:52 

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 国連安全保障理事会は20日、イスラエルとイランの交戦を巡って公開会合を開いた。米国のトランプ大統領が対イラン参戦の可能性を示唆する中、国連のグテレス事務総長は「国家の運命のみならず、私たちの共通の未来を形作る可能性のある瞬間だ」と述べ、全ての当事者に戦闘停止と交渉路線への回帰を促した。

 グテレス氏は会合冒頭の演説で「紛争当事国と、潜在的な紛争当事国へ」のメッセージだと前置きし、「平和を我らに」(Give peace a chance)と強く訴えた。同じ題の反戦歌は、ベトナム戦争さなかの1969年にジョン・レノンが発表し、現在も歌い継がれている。

 国際原子力機関(IAEA)のグロッシ事務局長は、イスラエルによるイラン国内の核関連施設への攻撃に関して、現時点では一般市民に影響を与える放射性物質の拡散はないと報告した。その上で、軍事的なエスカレーションは「イランが核兵器を保有しないことを長期的に保証する、不可欠な作業を遅らせる」と述べ、双方に「最大限の自制」を求めた。

 拒否権を持つ安保理常任理事国の立場は割れ、事態沈静化へ向けた安保理としての一致した行動は見通せない。

 米国のシェイ国連臨時代理大使は「イラン政府が正しいことをするには、まだ遅くない」と語り、イランに核開発の完全放棄を促した。イスラエルの軍事行動への支持を改めて表明し、安保理としてもイランに核開発の放棄を迫るべきだと述べた。

 一方、英国のウッドワード国連大使は「軍事行動ではイランの核能力を終わらせることはできない」と明言した。イスラエルの自衛権を支持する一方、外交努力はイランの核問題を長期的な解決に導く「唯一の道」だと述べた。

 中国とロシアはイランの核開発を非難することなく、イスラエルの行動は「イランの主権と安全保障を脅かしている」などと主張した。中国は、20日にスイスで開催された英仏独とイランの外相会談に対して「歓迎」の意思を表明した。

 今回の安保理会合には、イランとイスラエルも当事国として参加し、非難の応酬を繰り広げた。会合を要請したイランは、軍事行動も示唆する米国の威嚇は「国際法違反」だとけん制した。イスラエルは、一連の攻撃はイランによる核兵器保有の脅威を排除する「最後の手段」だと正当化した。【ニューヨーク八田浩輔】

毎日新聞

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