ガザ地上侵攻、2日で210人超死亡 ネタニヤフ首相「制圧目指す」

2025/05/19 20:15 

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 イスラエル軍は18日、パレスチナ自治区ガザ地区の北部と南部で大規模な地上侵攻を開始したと明らかにした。ネタニヤフ首相は19日のビデオ声明でガザ全域の「制圧を目指す」と強調した。中東の衛星テレビ「アルジャジーラ」によると、18日だけで少なくとも151人が死亡、19日も60人以上が犠牲になった。

  AP通信は、18日に南部ハンユニス周辺で少なくとも48人が死亡し、このうち18人は子どもだったと報じた。北部ジャバリヤの難民キャンプでは一家9人が犠牲になったという。

 被害は医療機関にも及んでいる。イスラエル軍は19日、ガザ北部にあるインドネシア病院を包囲し、病院は閉鎖に追い込まれた。ハンユニスのナセル病院では、軍の攻撃で医薬品の倉庫が破壊された。またハンユニスで「前例のない攻撃」を加えるとして、周辺住民に退避を勧告した。

 イスラエル軍はここ数日間でハマスの武器庫や対戦車ミサイル発射拠点など830カ所以上を空爆したと発表。カッツ国防相は13日の空爆の際、標的となったハマス最高幹部のムハンマド・シンワル氏が死亡したとの見方を示した。

 一方、イスラエル首相府は18日、3月から停止していたガザ地区への支援物資の搬入を近く再開すると発表した。「飢餓の発生を防ぐため、必要最低限の食料を供給する」としている。封鎖は2カ月以上続いており、世界食糧計画(WFP)などは、ガザの全住民約210万人が「深刻な食料不安」に直面していると警告していた。搬入再開により人道危機の緩和が期待されるが、住民に支援が行き渡るかは不透明だ。

 国連はイスラエルが計画する物資の配布方法について「移動が困難な人に届かない」と批判している。

 戦闘が激しさを増す中、停戦に向けた交渉も続いている。米ニュースサイト「アクシオス」によると、米国は45~60日間の停戦と引き換えに、ハマスが人質10人を解放する案を提示した。今回の案には、イスラエルが一方的に戦闘を再開できないように制限する文言が新たに盛り込まれたという。交渉筋は、一時的な停戦であっても戦争終結につながる可能性があることをハマスに示し、合意を促す狙いがあると指摘した。

 ネタニヤフ氏は前向きな反応を示しているが、多くの条件や留保を付けているという。一方のハマスは肯定的な返答をしておらず、恒久的な停戦につながる保証を求めている。

 ガザ保健当局によると、2023年10月の戦闘開始以降、ガザ側の死者は5万3475人に達した。【エルサレム松岡大地、ベイルート金子淳】

毎日新聞

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