中国、パナマ運河巡り香港企業に圧力 米国への売却は延期か

2025/04/01 21:00 

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 国際海運の要衝・パナマ運河の港湾事業を米国などの企業連合が買収する交渉を巡り、巻き返しを図る中国政府が管理権を保有する香港系企業への圧力を強めている。トランプ米大統領は運河の「奪還」に執念を見せてきたが、2日に署名期限を迎える買収の最終合意は延期の公算が大きくなっている。

 パナマ運河に関しては、香港の複合企業「長江和記実業」(CKハチソン・ホールディングス)が3月4日、傘下企業が保有する運河両端の2港の管理権などを米資産運用会社「ブラックロック」を中心とする企業連合に売却する基本合意を結んだと発表した。

 長江和記は、世界的な富豪の李嘉誠氏(96)が創業し、不動産を中心に多角的な事業を展開している。今回、企業連合側にパナマ運河を含む世界の計43港の管理権を売却し、その総額は228億ドル(約3・4兆円)に達する予定だ。

 トランプ氏は長江和記を事実上の中国企業と見なし、中国が太平洋と大西洋をつなぐパナマで影響力を拡大することを警戒。米国が建設した運河の管理権を取り戻すと訴えてきた。

 中国は売買合意への批判を強めている。国家市場監督管理総局は3月28日、市場の公平な競争を保護するために独占禁止当局が審査を始めると発表。外務省の郭嘉昆副報道局長は31日の記者会見で、米国の名指しを避けながら「経済的な強要や脅迫を利用して他国の正当な権益を侵害する行為に反対する」と批判した。

 香港でも、中国政府に近いメディアが米国を非難し、長江和記に撤回を促す記事をたびたび掲載している。香港紙「大公報」は15日の論評記事で「一時的に大もうけしても、最後は歴史の汚名を負うだろう」と主張した。

 中国政府で香港問題を担当する国務院香港マカオ事務弁公室は公式サイトに一連の記事を転載している。「民間取引への介入」と批判されるのを避けつつ、合意撤回を求めて圧力をかけてきた形だ。香港英字紙「サウスチャイナ・モーニング・ポスト」など複数の香港メディアは、最終合意への署名が期限内に行われない見通しだと報じている。【台北・林哲平】

毎日新聞

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