「永守イズム」で急成長したニデック いつしか圧力となった「3K」
モーター大手ニデックが28日に東京証券取引所に提出した改善計画書は、創業者である永守重信氏が築いてきた社内風土の弊害を指摘する内容だった。岸田光哉社長は、東京都内で開いた記者会見で「まず『必ず正しくやる』ということを中心に据え、それによって失われるものがあるのなら失われるべきだ」と指摘。企業風土改革の必要性を繰り返した。
記者会見の冒頭、岸田社長は「(東証から)特別注意銘柄に指定されていることなどについて、株主、投資家、市場関係者、すべての関係者に深くおわび申し上げる」と謝罪した。
1973年に永守氏が創業したニデック(日本電産)は、「永守イズム」と呼ばれる強烈なリーダーシップとスピード重視の経営で急成長を遂げた。自著によると、永守氏は創業当時から「50年後には売上高1兆円を目指す」というビジョンを語り、社内では「1番を目指せ」「1番以外は全部ビリ」と訴えた。M&A(企業の合併・買収)を駆使し、2022年度の連結売上高は2兆円を超えた。
一代でグローバル企業に育てた永守氏は「3K(高成長、高収益、高株価)」を常に成立させることを経営の基本姿勢とし、その指標として株価を重視した。
改善計画書は、今回の不適切な会計処理の原因に「短期的な利益を最優先し、目標未達を許容しない企業風土があった」と説明。永守氏の「すぐやる、必ずやる、できるまでやる」という理念が圧力となり、「利益を上げた者が最も評価される」とのメッセージが社内に浸透。短期的な利益優先の意識が醸成されたとした。
強いトップダウン経営は「(永守氏の)意向を優先する風土」を生み、ガバナンスや内部統制の脆弱(ぜいじゃく)性の原因となった。周囲も永守氏に権限が集中していると認識していたことから、永守氏の意向に沿うような事業計画や投資計画が作られていったという。
トップに依存した経営が続く中で、後継者選びは混迷した。外部人材のスカウトに力を入れ、日産自動車出身の関潤氏が社長に就任したが、永守氏の経営姿勢とあわずに退社した。24年にソニー出身の岸田氏が社長に就いたが、こうした社長候補者選びでも株価が「経営者の成績表」としてより強調されたという。
今回の問題を受け、永守氏は昨年12月に代表取締役などを辞任。「ニデックの企業風土は私が築いた」とした上で、「(企業風土について)皆様にご心配をおかけし申し訳なく思う」とするコメントを公表した。
永守氏が去った後も、市場の目は厳しい。ムーディーズ・ジャパンは1月22日、ニデックのシニア無担保債務格付けを3段階引き下げ、「同社がガバナンスと会計に関する懸念に対処するまで、格付けが引き上げられる可能性は低い」と断じた。
今回の社内調査は問題の背景を調べたもので、不適切会計の事実関係などは第三者委員会が調査し、その後に関係者の処分などをする見通し。社内改革によって、市場からの信頼を取り戻せるのか。経営陣の課題は重い。 【小坂剛志、妹尾直道】
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