その「バズり」本物? SNS自動拡散プログラム、選挙で悪用の恐れ

2026/01/27 10:00 

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 SNS上では選挙や政治に関わる真偽不明の情報やデマ、偽の画像・動画の拡散が問題になってきたが、その中で懸念されている手法の一つが、特定作業を自動的に実行するプログラム「BOT(ボット)」による「情報拡散工作」だ。

 コンピュータサイエンスに詳しい国立情報学研究所の佐藤一郎教授はSNSユーザーに対し、こうした工作活動が存在する可能性を念頭に置いた上で、情報に接する際は1次情報や真偽をよく確認することを呼びかける。

 ◇「拡散工作」しやすいSNSは…

 一体どういう仕組みなのか。

 まず情報拡散工作が最もしやすいSNSは、X(ツイッター)だという。佐藤教授は「『これから何が注目を集めそうか』を予測するという、Xのアルゴリズムが強く関係している」と説明する。

 こうした工作活動については、個人や組織が仕事として請け負う産業化や、役割ごとの分業化も進んでいるとみられる。

 準備段階では「情報の投稿用アカウント」と、その投稿に「エンゲージメント(反応)工作」をするアカウントをそれぞれ多数用意する。

 特に投稿用アカウントは、急なアカウント作成や真の目的につながる投稿はせず、実行の数カ月程度前から作成し、日常的な投稿をしながら信用度を事前に上げておく。

 その上でタイミングを見計らい、各投稿用アカウントがボットを通じ、文章や画像・動画を短時間に多数投稿する。他方、各エンゲージメント用アカウントは、投稿された直後から「いいね」やリポストといった反応を、同じくボットを通じて短時間に大量に実行する。

 ◇「関心高い」とアルゴリズムが認識

 XなどSNSのアルゴリズムは、短時間に多数のアカウントから類似の内容が投稿されたり、投稿直後に多数のエンゲージメントを獲得したりしていることを検知すると「多くの人の関心が高い話題、もしくは今後高くなりそうな話題」と認識する。その内容は不特定多数の一般ユーザーに表示されるようになる。

 結果、多くのユーザーが投稿内容を自発的に「いいね」やリポストするようになり、更にフォロワー数の多い著名アカウントが見つけて反応すると、信ぴょう性や影響力は大きく増すことになる。

 こうした手法を選挙戦期間中に使えば、特定の政党や候補者の評判を落とすフェイク(偽)情報も、大規模に拡散できることになる。

 ◇フェイク情報が拡散されやすい理由

 特にフェイク情報を含んだ投稿は拡散されやすい。なぜなら「フェイク情報は多くの人が驚きや怒りなどを感じるようにしており、拡散してもらいやすいため」(佐藤教授)だ。

 政治的な内容であれば、特定候補者を称賛する内容より、対立候補者の偽のスキャンダルの方が関心をひきやすいという。

 更に生成人工知能(AI)の進化で、フェイク情報を含む投稿の巧妙さが一層増す恐れが高まっている。これまで日本では、日本語の「言語の壁」で海外の事業者などからの影響は受けにくかったが、それもAI技術の発展で壁が崩れつつある。

 また工作活動をしている投稿用アカウントでも、フェイク情報だけでなく、うそのない内容の投稿も織り交ぜており、問題のあるアカウントなのかどうか、判別を困難にさせているとみられる。

 佐藤教授は「SNS、とりわけXは、情報拡散工作が可能なアルゴリズムになっている。見る人はそうした可能性を踏まえて、ニュースソースをよく確認するなど、十分に注意して情報に接してほしい」と呼びかける。

 刺激的な内容の投稿ほど、「いいね」やリポストなどの反応をする前に、一呼吸置いて冷静に考えてみることが必要だ。【町野幸】

毎日新聞

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