「災害関連死防止が使命」 リハビリ支援続ける医療従事者チーム
災害時のリハビリテーション支援のために医療従事者でつくる「広島災害リハビリテーション推進協議会(広島JRAT)」。三上幸夫代表(56)は、能登半島地震(2024年1月)の被災地で活動中に避難所関係者から「マッサージをしてくれるのですか」と聞かれ、知名度の低さを痛感したという。三上さんは「JRATは災害時に引き起こされる生活機能の低下を診ている」と強調する。
支給されたマット1枚の上に横たわった高齢女性が「立つことができない」と嘆いていた。三上さんは、24年1月24日から石川県輪島市で活動した際の避難所の状況を振り返る。
三上さんは広島大学病院リハビリテーション科教授で、多くの患者とリハビリ治療に取り組んだ経験がある。女性は膝を悪くし、立ち上がるためには寝具に高さが必要だった。体育館にあったマット3枚を急いで確保し、女性が使っていたマットの上に置いた。女性は踏ん張りがきき、自力で立ち上がれるようになった。
女性は避難所内で自分の居場所から動けなくなり、歩く機会の減少とストレスなどで心身機能が低下する生活不活発病のリスクがあった。避難所は簡易風呂やトイレが設置され、食べ物も支給されていたが、三上さんは「それだけではダメなんです」と話す。
風呂やトイレにある段差や階段をまたぐことができない高齢者がいるため、隊員たちは段差をなくすためのマットや手すり代わりの椅子を設置した。また、食事の際に提供されるスプーンを使うことが難しい、手にまひのある人には、柄にテープを何重にも巻いて太くすることで持ちやすくした。
三上さんは言う。「命や建物の(治療や対応などの優先順位を決める)トリアージは終わっていたが、『生活機能のトリアージ』はまだでした。命を助けることは最優先だが、避難所での生活など、その先も考える必要があります」
石川、新潟、富山の3県で能登半島地震の死者は計723人(26年3月4日現在)に上る。このうち、避難生活などが原因で亡くなる災害関連死は石川県481人▽新潟県6人▽富山県8人――だった。
能登半島地震では、支援を必要とする被災者がどこにいるのか情報を把握できず、手当たり次第に各地の避難所へ行っていた。このため、三上さんが所属する広島大学を中心に、支援が必要な人はどの避難所に何人いるか把握できるアプリの開発を進めている。
広島JRATは熊本地震(16年4月発生)を機に発足。県医師会や県理学療法士会などと平時から協力態勢を取り、災害発生時に被災地で円滑な活動ができるようにしている。25年3月には災害に備えた協定を県と結び、連携強化を申し合わせた。
県は南海トラフ巨大地震が発生した場合、災害関連死が3700人に上ると推計している。三上さんは「災害発生時に、より迅速なリハビリ支援ができるようになった。災害関連死を防ぐという使命をこれからも果たしていきたい」と力を込めた。【川原聖史】
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