裁判長「極刑選択の余地ある」 埼玉3人殺害の被告に無期懲役判決
埼玉県飯能市の住宅で2022年に親子3人が殺害された事件で、殺人や非現住建造物等放火などの罪に問われた同市の無職、斎藤淳被告(43)の裁判員裁判の判決が16日あり、さいたま地裁は無期懲役(求刑・死刑)を言い渡した。
井下田英樹裁判長は、犯行の残忍性や計画性から「極刑を選択する余地のある事案」としたうえで、被告は精神障害の影響で「心神耗弱の状態だった」などと量刑理由を述べた。
主な争点は被告の犯行かどうかの犯人性と、刑事責任能力の有無だった。
判決は、被害者とDNA型が完全に一致する血痕が付着した衣服などが被告宅から発見されたことを踏まえ、犯人性について「合理的な疑いを超えて認定できる」と指摘。さらに、事前に凶器を購入するなど一定の計画性があり、被告には犯行が違法との認識があったとした。
動機については、前年に被害者宅の車が傷つけられた事件を巡り、被告が器物損壊容疑で逮捕され、損害賠償を請求された影響を検討。「被害者から自宅の損傷などの被害を受けている」という精神障害の妄想に、器物損壊事件の怒りが合わさって強い殺意を抱くようになったなどとした。
そのうえで精神鑑定結果などから被告は精神障害を患い、「判断能力、行動制御能力に問題はなかったとは言いがたい」との判断を示した。犯行当時は「心神耗弱状態であったと認められる」と結論付けた。
判決によると、被告は22年12月25日朝、自宅にいた米国籍のビショップ・ウィリアム・ロス・ジュニアさん(当時69歳)ら3人をおので殺害。さらにビショップさん宅に火を付けた。被告は近所に住んでいた。
さいたま地検は判決を受けて「内容を精査し、適切に対処したい」とコメントを発表。被告の弁護人は取材に「判決は一定程度主張が認められているが、部分的に認められたに過ぎない」などと答えた。
◇専門家の見解は
東京都立大の星周一郎教授(刑事法)は「(斎藤被告が事件当時、精神障害に罹患(りかん)していたとする)精神鑑定の結果を尊重した判決」と解説する。近年の刑事裁判では死者の数などを重視する一方で、精神鑑定の結果が軽視されるケースもあると指摘し、「本来あるべき判断がなされた」と評価した。
その上で、心神耗弱の状態だったとしても、殺害方法などから事件は「極めて悪質で残忍」として、「遺族感情や結果の重大性を鑑みて、無期懲役を選択したのは妥当な結論だ」と述べた。【加藤佑輔、田原拓郎、板鼻歳也】
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