再審制度に「証拠の目的外使用禁止」案 「活動の弊害」と反発も
確定した刑事裁判をやり直す再審制度の見直しを議論する法制審議会(法相の諮問機関)の部会が16日、法務省で開かれた。制度改正に向けた「検討資料」が示され、再審請求審で開示された証拠を目的外で使用することを禁じる規定が盛り込まれた。無罪につながる可能性がある証拠を広く周知したい日弁連側は「活動の大きな弊害になる」と強く反発している。
検討資料で示された証拠の目的外使用の禁止は、再審請求者や弁護人が検察から証拠の開示を受けた場合、その後の審理で使用する目的以外で人に提供や提示をすることを禁じるとした。違反した場合、提供した目的や関係者の名誉が害されたかなどを考慮した上で、1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金とする。
刑事訴訟法は通常審での証拠開示を定めた規定で、同様の目的外使用の禁止規定を設けている。証拠の漏えいを防ぎ、証拠に記載された関係者のプライバシーを守る必要性から設けられた。現行の再審制度には証拠開示の規定もなく、法制審の部会では「再審で証拠開示を制度化するなら、目的外使用禁止の規定も必要」との意見が出ていた。
過去の再審無罪では、弁護士らに開示された証拠が報道されて事件の問題点が広く知られるようになったケースが少なくない。
4人を殺害したとして一度は死刑が確定した袴田巌さんの再審請求では、犯行着衣とされた「5点の衣類」のカラー写真が証拠として開示されて再審無罪につながった。写真を見た支援者が衣類の色を不自然と感じて独自の実験を繰り返し、報道機関もカラー写真の提供を受けて報じた。
日弁連側は「報道や支援者の活動が再審無罪判決に寄与することがある事実を踏まえる必要がある」と一律の禁止に反発している。大学教授やジャーナリストらでつくる「司法情報公開研究会」は12日、禁止規定を設けないよう部会に申し入れた。ジャーナリストの江川紹子氏は「再審請求審は、証拠が法廷で公にされる通常の裁判と違い非公開で密室で行われる。外部からの目が届かなくなるのが問題だ」と指摘する。
また、検討資料は、再審請求の実質的な審理に入る前の段階でも、裁判所が「請求の理由がない」と判断した場合、手続きを終了させることができる「スクリーニング規定」も盛り込んだ。日弁連側は「多くの再審請求が証拠開示がなされる前に棄却されることになりかねない」と強く反対している。
再審請求は元被告側が「無罪を言い渡すべき明らかな新証拠」を提出することが要件だが、中には明らかに理由がない請求もあるとされる。法務省によると、16日の部会で学者の委員から、こうした請求を除外することで審理が必要な事件の手続きが充実するとし、「合理的な規定だ」との発言もあったという。【巽賢司、三上健太郎】
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