再審請求の証拠開示を義務化へ 法制審部会が制度改正の「検討資料」

2025/12/16 17:23 

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 確定した刑事裁判をやり直す再審制度の見直しを議論する法制審議会(法相の諮問機関)の部会が16日、法務省で開かれ、制度改正に向けた「検討資料」が示された。明文化されていない再審請求審の証拠開示制度について、検討資料の案を基に証拠開示を義務化することで一致した。

 一方、開示の範囲を巡っては、日本弁護士連合会側と検察・裁判所側で意見の隔たりが大きく、意見集約ができるのかが今後の焦点となる。法務省は法制審の答申を得て、改正法案を来年の通常国会に提出することを目指している。

 再審請求では、有罪が確定した元被告側が、確定審にはなかった新証拠を裁判所に提出しなければならない。裁判所が「無罪を言い渡すべき明らかな新証拠」と認めれば、再審開始となる。その後の再審公判で、新証拠を踏まえて有罪、無罪を決める。

 検討資料はA案として、新証拠の提出を受けた裁判所は再審請求の理由に関連した証拠について、開示の必要性と弊害を考慮し、相当と認めるときは検察官に開示を命じるとした。裁判所は検察官に保管する証拠の一覧表の提示も命じることができる。

 現行の再審請求審でも、裁判官は裁量で証拠開示命令を出すことがある。検察・裁判所側は、A案は「現在の運用と変わらない」と主張している。これに対して日弁連側は、A案では裁判官の裁量で開示されていた証拠も関連性なしと判断され、開示範囲が今よりも狭まる恐れがあると反論。幅広い証拠開示につながる制度を作る必要があると訴えた。

 部会では裁判所に開示命令を出すことを義務付け、検察官にも開示の法的義務が生じるという理解で一致。今後、A案をベースに証拠開示の範囲を日弁連側の主張に沿った幅広いものにするのかを議論する。検討資料では「一定の類型に該当する証拠」も開示対象とするB案も併記されたが、B案は議論の対象から外れる。

 また、再審開始決定に対する検察官の不服申し立て(抗告)についても、禁止するA案と、禁止しないB案の二つが併記された。日弁連側は「再審の迅速化につながる」とA案を支持するが、検察側は「誤った再審開始決定を是正する機会が失われる」とB案を譲らず、対立している。

 再審制度見直しの議論は、1966年に静岡県で一家4人を殺害したとして死刑が確定した袴田巌さん(89)の再審無罪が2024年10月に確定したことで本格化した。袴田さんの無罪につながった証拠は再審請求審で証拠開示が繰り返される中で見つかった一方、検察側が再審開始決定に抗告したことで審理の長期化が問題となった。【巽賢司】

毎日新聞

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