物価高に危機感「まずは相談して」 シングルマザーらを支援 大阪
「お母さんや子どもが孤立しないためにも、まずは相談してほしい」。シングルマザーや離婚前の女性などを支援するNPO法人「しんぐるまざあず・ふぉーらむ・関西」=大阪市北区=の理事長を務める枝村たつ江さん。滋賀県の高校を卒業後、大阪で生活費と学費を稼ぐためバイトをしながら、夜間大学を卒業。29歳の時、未婚で長女を出産した。シングルマザーとなり、大学事務員や通信教材の会社員などさまざまな仕事をこなしながら、長女を育ててきた。
◇「社会体験」の機会を
長女が3歳になった1984年ごろ、低所得のひとり親家庭などに支払われる児童扶養手当を、未婚の母に支給しないとする法改正案を巡り、全国で反対運動が起きていることを知った。懸命に仕事に励んでいたが、当時の年収は200万円以下。児童扶養手当が打ち切られると生活は厳しくなる。なにより「未婚だけ対象外にしようとするなんて、家制度を重んじた女性差別だ」と感じた。そこから街頭での署名活動などに参加するようになった。
改正案が撤回された後も任意団体として児童手当“改悪”反対の署名活動などを行っていたが、2006年にNPO法人化。理事を経て、23年からは理事長として活動に尽力している。
シングルマザー世帯では、物価高などで生活が苦しい家庭が増えており、今夏は関西の85世帯に食料支援を行った。「『電気代が怖い』『親は一食しか食べられない』という声も多い」と危機感を訴える。
親子遠足やバーベキュー、交流会などの「社会体験」をする企画も大事にしている。「貧困で、社会体験をさせられないという家庭も多い。孤立させないためにも、交流する機会は大事」といい、12月21日にはクリスマス会を開く予定だ。
◇行政の差別是正訴え
直接的な支援だけではなく、シングルマザーに対する行政の差別的な扱いの是正を訴えることにも力を注いでいる。自分自身、未婚のシングルマザーであるということを職場では明かしてこなかった。「昔と違って、今は母子家庭への差別などはなくなってきたようにみえる。でも、制度を作る人たちの無自覚な差別は残っていて、当事者たちにとっては、ずっと心の傷になる」と語る。
例えば、未婚の母が児童扶養手当を申請する際に提出する書類の中に、自治体によっては子どもの父親と婚姻に至らなかった理由や別れた時期、父親が今後認知する予定があるかなどを細かく記入する欄がある。
手当支給外となる事実婚状態でないかをチェックするための書類だが、当事者側からは「プライバシーの侵害」「傷ついた」という声が上がる。それでも「申請に必要だと言われてしまうと、従わざるを得ない」というのが実態だ。
強く抗議することができない当事者の代わりに、自治体に交渉に赴く。それを受けて自治体が実際に書類の書式を変更するケースも出ており、「差別のない世の中を作りたい」と力を込める。【芝村侑美】
◇枝村たつ江(えだむら・たつえ)さん
1952年生まれ。大阪市在住。法人では、お米など食料の寄付や会員を募集している。支援の相談なども含め、ホームページ(https://smf-kansai.main.jp/)の「お問い合わせ」から受け付けている。
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