「返せ」では一方通行 母の苦労胸に、元国後島民2世が「共住」模索
「住所欄が『未定』のまんま。やっぱり苦労したんだな」
札幌市内で今年5月、終戦後に北方領土から北海道に引き揚げた元島民が乗った乗船名簿の閲覧会があった。
中標津町で印刷会社を営む舘下雅志さん(66)は、国後島から1948年9月に10代で引き揚げた母の名前を見つけた。
自分が生まれる前のできごとだが、「こうして証拠を見るとうるっとくる」とこみ上げてくる思いがあった。
2012年に亡くなった母京子さんは、断片的に島での思い出を話してくれた。
1934年生まれの京子さんは、国後島の中部・古釜布(ふるかまっぷ)の海岸沿いで幼少期を過ごした。
高山植物を根室市で売っていた父、豆腐屋を営む母の元で育ち、島内の芝居小屋にもよく出かける暮らしは「楽しかった」という。
そんな日常は終戦後に一変する。
45年9月に旧ソ連軍が上陸した後は、「ロシア人の警察官と一緒に暮らした」と聞いた。
自宅の居間を占拠されての生活を強いられた。
一方で、チョコレートやキャラメルをもらい、ロシア語も教わったのだという。
樺太(現ロシア・サハリン州)を経由し、引き揚げ船「高倉山丸」で函館港に引き揚げた後、親戚を頼って根室に身を寄せた。
しかし、親戚は45年7月の根室空襲の被害を受け、生活は厳しかった。
京子さんは複数の商店で働いて家計を支えた。
「母があまり(島の)話をしなかったのは、引き揚げ後の生活の苦しさからでは」と思いをはせる。
舘下さんにとっても島は特別な場所だ。
93年、心臓を患っていた京子さんから「写真を撮ってきてくれないか」と頼まれ、ロシア人島民との「ビザなし交流」に参加した。
国後島では京子さんが住んでいた家があったと思われる場所や拿捕(だほ)された船、日本人墓地などを夢中で撮影した。
この時、撮影した写真はフィルム10本分。
写真を見返しながら「古里の島をとられたんだ」と実感した。
しかし、「返せ」だけでは一方通行のまま。
島で暮らすロシア人の生活の貧しさも印象に残っていた。
「うまく(ロシア側を)引き込める方法がないか」
元島民2世の仲間に声を掛け、2006~10年に国後島に住む有志のロシア人を交えて教育やインフラ、法整備など幅広いテーマで議論の機会を持った。
思い描いたのは、それぞれの居住地を設け、互いに行き来できる「共住」の島だった。
5年間の成果を日本語とロシア語でまとめ、日本政府に提出した。
ロシア政府の介入などでこの活動は中断してしまったが、再開を願っている。
09年以降は、北方領土の知識を広めるための「ネット検定」を数年おきに開催。
直近では約400人が受験した。
さまざまな人に島の風景を味わってもらうため、上空から四島を眺めるような「シミュレーション飛行」の映像もインターネットで配信した。
21年には千島歯舞諸島居住者連盟中標津支部長に就任。
約110人の会員の内、8割は元島民2世や3世が占めている。
「元島民が少なくなり、風化するのがこわい」
再び古里の地を踏めなかった母の分まで、2世としての務めを果たしていく。【森原彩子】
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