工藤会トップの信託 被害者弁護団「泣き寝入りの選択肢ない」

2025/11/11 21:17 

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 市民襲撃事件で殺人罪などに問われた特定危険指定暴力団「工藤会」(北九州市)のトップで総裁の野村悟被告(79)=2審で無期懲役、上告中=が複数の土地を親族に信託したのは賠償逃れが目的だとして、被告の親族2人に信託取り消しや所有権移転登記の抹消を求めて提訴した事件被害者の弁護団が11日、記者会見を開き、意義を強調した。「指定暴力団のトップがこういうことをするのはなかなか無い。泣き寝入りという選択肢はなく、被害者の権利救済に取り組みたい」などと述べた。

 弁護団によると、提訴したのは、2011年に北九州市で起きた建設会社会長(当時72歳)射殺事件の遺族2人。事件に工藤会組員が関与したことから、2人は暴力団対策法に基づいて組トップの野村被告を相手に損害賠償請求訴訟を起こして勝訴し、25年6月に最高裁で計3850万円の賠償命令が確定した。

 一方、野村被告は損害賠償請求訴訟が起こされる前の20年6~10月、北九州市内の土地少なくとも23筆(計7068平方メートル)と自宅を親族2人に信託し所有権を移転していたため、遺族側は仮差し押さえができなくなっていた。賠償金は遅延損害金を含めて6525万円(10月19日時点)に上るが、現在まで1円も支払われていないという。

 弁護団は「(野村被告は)遺族らが損害賠償を求めることを当然予想できた。将来の強制執行を逃れるための虚偽の信託登記だ」と主張。信託による所有権移転登記の抹消を求めて10月20日付で福岡地裁に提訴した。抹消を求めるのは信託財産のうち、北九州市内の土地10筆(1221平方メートル)。今回の提訴に先立ち、遺族側の仮処分申請を受けて福岡地裁小倉支部は今年5月、10筆の処分を禁じる仮処分命令を出した。遺族側が本訴訟で勝訴すれば、10筆を強制競売にかけるなどして賠償金を回収する方針だ。

 野村被告側の信託登記に関与した弁護士はこれまでの取材に「親族に財産を託す正当な目的があった」などと説明している。

毎日新聞

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