「背中押してくれた」 全焼から再建の映画館主ら、仲代達矢さん悼む

2025/11/11 19:30 

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 俳優、仲代達矢さんの悲報に、北九州市小倉北区にある老舗映画館「小倉昭和館」の館主、樋口智巳(ともみ)さんは「今の昭和館があるのは仲代さんが背中を押してくれたおかげです」と静かに語った。

 創業80年超の昭和館は2022年8月、旦過(たんが)市場一帯を襲った火災で全焼した。失意の樋口さんが「火災でサインも焼けてしまった」と電話で伝えると、仲代さんから「何枚でも100枚でも書くよ。昭和館は不滅。樋口さんがいる場所が昭和館だから」と励まされた。

 昭和館は23年12月に元の場所で再開した。館内には、再建を応援してくれた映画関係者への感謝を込めて現在約60席の「映画人シート」を設置。仲代さんの名前が、他の俳優らとともに金色の刺しゅう糸で背もたれに刻まれている。

 樋口さんは、仲代さんが昭和館に映画を見に来た時を思い返し「お願いして観客の前であいさつしていただいた。その時、すっと立ち上がると『役者、仲代』になるんですね。男の色気がある方。とても素晴らしい方でした」としのんだ。

 仲代さん主宰の「無名塾」が北九州で公演する際にサポートした演劇鑑賞団体「北九州市民劇場」の民谷陽子事務局長は「23年春の作品が最後。塾を作った時、プロの役者は何人もいなくて、本当に素人の人を育てながら芝居を作っていった」と懐かしんだ。

 滞在中は、劇団員らと小倉北区の鳥町食道街にあった中国家庭料理店をよく訪れた。中国残留孤児が主人公のNHKドラマ「大地の子」に出演していたこともあって、中国・大連市出身の店の経営者と意気投合。「店が(24年の)火災で被災した時もすごく気にかけてくださった」と振り返った。【反田昌平、橋本勝利】

毎日新聞

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