「また勧誘か」と思ったら…ノーベル賞北川進さん、吉報の瞬間明かす
微細な穴に二酸化炭素(CO2)などを自在に分離・貯蔵できる「金属有機構造体」(MOF)を開発した京都大高等研究院特別教授の北川進さん(74)が8日、2025年のノーベル化学賞に選ばれた。北川さんは記者会見で「(受賞によって)一般の方に研究が認知されたことが非常にうれしい」と語り「新しいことにチャレンジすることは科学者の醍醐味(だいごみ)」と喜びをかみしめた。
午後8時に京都大(京都市)で会見した北川さんは拍手で出迎えられると、開口一番「一緒に進めてきた同僚、学生の皆さん、海外を含めた研究者の皆さんに感謝申し上げたい。支えてくれた家族にも感謝している」と謝辞を述べた。
大学で仕事を片付けていた午後5時半に吉報を受けた。「最近、勧誘の電話がよくかかってくる。またかと思ったら(スウェーデン王立科学)アカデミーの選考委員長を名乗ったのでびっくりした」「非常にうれしいのですが、(歴代受賞者の)皆さんがどう応えていたのかなという思いがよぎった」などと関西弁で語り笑いを誘った。その上で「感謝の気持ちと、報われたんだな」とほっとした様子で話した。
米豪の研究者との共同受賞に「3人のチームワークで認められた。友達として非常にうれしく思う」とたたえ「ケミストリー(化学)はチームプレーが重要。それがうまく機能した時に、大きな成果が生まれる」と話した。
苦汁もなめた。1997年にMOFを論文発表した後、米国であった会議で研究成果を全否定された。「空調のない暑い部屋でダメだと言われ、たたかれて、涙か汗か分からない、そんな経験をした」と振り返る。それでも確信が揺らぐことはなく、共同研究者らとデータを積み上げてきた。
自身の経験を踏まえて、若い世代に「チャンスは祈るものではなく、自分でつくりあげるもの」とエールを送り、周りの人と協力しながら成し遂げる大切さを説いた。
空気の再利用を目標に掲げ「21世紀は気体の時代」と熱弁。エネルギー問題や環境保全にも期待が集まり、社会への応用が進められている。「世界で多くのスタートアップもでき、利用が増えていくと思う。絶対無理だと思うことにチャレンジし、実現していきたい。『気体』はますます『期待』される存在です」。ユニークな言い回しで、さらなる社会実装に願いを込めた。【中村園子、砂押健太、大東祐紀】
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