ゾウがぶらさがってもはがれない 超強力な接着剤を開発 北海道大

2025/08/07 00:00 

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 水にぬれていても極めて強力な接着力を長期間維持できるジェル状の材料を、北海道大のチームが人工知能(AI)による材料探索で開発した。二つの材料を1平方メートル接着させた場合、ゾウ十数頭がぶらさがってもはがれないほど強いという。全国で破損が相次ぐ上下水道管の補修や、洋上風力発電などの海中構造物の建築、立体的な臓器作製などへの応用が期待できるとしている。

 ゼリーのようなジェル状の接着剤は凹凸にも対応できるため、建築から医療まで幅広い用途に使われている。しかし、柔軟性を得るための分子構造は複雑で開発が難しいほか、塗布面がぬれていたり水中だったりすると接着力を維持しにくくなる課題があった。

 チームは、細菌や軟体動物などが優れた接着性のたんぱく質を作り出していることに注目した。米国立衛生研究所(NIH)に登録されている2万4707種類の粘着たんぱく質をもとに、AIなどを使って強力な接着力を持つ分子構造を設計。水中で1平方メートルに100トン以上の重さがかかってもはがれない、接着剤の開発に成功した。これまでの最高性能ジェル材料に比べて5倍以上強いとしている。

 チームによると、水を満たした高さ3メートルのプラスチック製パイプに開けた直径2センチの穴をふさぐために使用し、半年以上たった今も水漏れを防ぐことができている。再使用も可能という。また海中の岩にアヒルのおもちゃを接着するために使うと、波の衝撃に負けず潮の満ち引きに耐えた。

 北大の龔剣萍(グン・チェンピン)教授(高分子材料)は「医学分野や、水中も含めた工事現場など、幅広い分野への応用が期待できる。AIを使い、さらなる高性能化を追求したい」と話す。

 成果は、6日付の英科学誌ネイチャー(https://doi.org/10.1038/s41586-025-09269-4)に掲載された。【田中泰義】

毎日新聞

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