平和記念式典の石破首相あいさつに評価の声 過去3首相との違いは?
「原爆の日」を迎えた6日、広島市で開かれた平和記念式典での石破茂首相のあいさつが話題を呼んでいる。
X(ツイッター)上では「自分の言葉で語っている」と称賛する声が相次ぎ、専門家も「戦後80年にふさわしいメッセージだ」と高く評価する。
過去の首相あいさつとどう違うのか。2020年の安倍晋三首相、21年の菅義偉首相、22年の岸田文雄首相のあいさつと比較すると――。
◇「過去3人のコピペ原稿と違う」
平和式典は午前8時に始まった。原爆投下の8時15分に参加者らが黙とう。松井一実・広島市長の平和宣言、地元の小学生による「平和への誓い」に続いて、石破首相があいさつに立った。
石破首相は終始、手元の紙に目を落としながら、約5分間にわたってスピーチした。
インターネット上でも全文が公表されると、SNS(交流サイト)上で内容を評価する声が相次いだ。
<内容や言葉選びはすごい良かった。最後に短歌を引用したところも。過去3人の総理のコピペ原稿とは全く違う>
<強く心に響いた。政治家のスピーチには珍しく「人の言葉」だった>
<自分が聞いた総理あいさつで一番良かった……原稿も自分で書いたんだろう>
◇原爆の悲惨さ 自分の言葉で表現
「『コピペ』など心ないメッセージが続いていた中で、本人の言葉で語った、主体的に出したメッセージだと感じた」
政治学者で高千穂大教授の五野井郁夫さんも、過去の首相あいさつとの違いを強調する。
五野井さんが注目したポイントは何か。
一つは、自身が訪れた際に見たもの、感じた思いを盛り込んでいる点だ。
石破首相は「2年前の9月、広島平和記念資料館を、改装後初めて訪問しました」と述べ、「黒焦げになった無辜(むこ)の人々。4000度の熱線により一瞬にして影となった石(中略)夢や未来が瞬時に容赦なく奪われたことに言葉を失いました」と続けた。
「本人が見た細かな描写も盛り込まれていて、被爆者の問題に心を砕いているという印象を受けた」
また、結びでは、歌人・正田篠枝さんの短歌を2度にわたって読み上げた。
「太き骨は先生ならむ そのそばに 小さきあたまの骨 あつまれり」
この短歌は、歌集「さんげ」に収録されており、平和記念公園そばの「原爆犠牲国民学校教師と子どもの碑」にも刻まれている。
「官僚任せのお決まりのパッケージではなく、原爆の悲惨さを正しく伝えるという意味で適した表現だったのではないか」
◇過去3人の首相あいさつは?
平和記念式典での首相あいさつは、度々批判されてきた。
2020年の安倍晋三首相のあいさつは、広島と長崎でほぼ同じ「コピペ」であることが発覚した。18、19年も極めて類似する内容だった。
21年の広島市の平和記念式典では、当時の菅義偉首相があいさつの一部を読み飛ばしたこともあった。
後に「原稿がのりでくっついて剥がれなかった」と釈明している。
22年には、岸田文雄首相も安倍首相同様に、広島、長崎でほぼ同じ内容のあいさつを述べた。
「毎年同じなので、あまり聞いていなかった」
当時、取材に応じた被爆者団体の関係者は首相あいさつの感想をそう述べている。
五野井さんは、過去3人の首相あいさつを酷評する。
「被爆体験を人ごととして捉えていて、緊張感が感じられない。人の心が通っていないものだった」
実際、3人の首相のあいさつには、原爆の惨禍に関する自分なりの思いや具体的な描写などは見られない。
◇日本政府の立場堅持
ただ、石破首相のあいさつも、「核なき世界」の実現へ向けた日本政府の取り組みに関しては、従来の立場を踏襲している。
「非核三原則を堅持しながら、『核兵器のない世界』に向けた国際社会の取り組みを主導することは、唯一の被爆国である我が国の使命です」
「核兵器不拡散条約(NPT)体制の下、『核戦争ない世界』、そして『核兵器のない世界』の実現に向け、全力で取り組んでまいります」
過去3人の首相あいさつにも同様の文言は盛り込まれている。また、核兵器禁止条約には石破首相も言及しなかった。
◇「被爆国としてまともな内容」
昨年、被爆体験の継承や核兵器廃絶運動を続けた日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)がノーベル平和賞を受賞し、今年は戦後80年の節目を迎えた。
被団協は核兵器禁止条約の批准や原爆被害者への国家補償を求めている。
五野井さんは「日米の安全保障を重視する外交姿勢から仕方ない面もあるが、踏み込んでもよかったのではないか。被爆者からすると、もう一声と感じると思う」と注文しつつも、首相の立場にも理解を示した。
「被団協に配慮し、国際社会が望む日本のあり方も理解したメッセージだったと思う。被爆国であることをしっかり見つめた、80年の追悼の辞としてはまともなものだった」【田中理知】
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