渋沢栄一が創業した文化財で食事を レンガ製造のホフマン輪窯
埼玉県深谷市ゆかりの実業家・渋沢栄一が明治期に創業した日本煉瓦(れんが)製造の中核施設で、国指定重要文化財の「ホフマン輪窯(わがま)6号窯」(深谷市上敷免)の保存修理工事が完了し、31日、報道陣に公開された。長さ56・5メートル、幅20メートルの環状構造を持つ煉瓦窯は、景観を保全したまま耐震補強が施された。市は重文施設としては全国初となる「煉瓦窯内の飲食空間」としての活用を計画している。
日本煉瓦製造は1887年に設立。ドイツのホフマン式輪窯技術を導入し、最盛期には6基の窯が稼働した。ここで生産されるレンガは「上敷免製煉瓦」と呼ばれ、迎賓館赤坂離宮や東京駅などに用いられ、日本の近代化の礎を築いた。だが需要の落ち込みで2006年に自主廃業した。
唯一現存する6号窯は1907年建造で、68年まで稼働した。18の焼成室を環状に並べ、火を循環させながら煉瓦を連続生産できる構造。日本に残る四つのホフマン輪窯の一つで、97年に国の重要文化財に指定された。しかし、耐震性の問題から原則非公開とされてきた。
市は2019年から保存修理工事に着手。窯内に堆積(たいせき)していた約8トンの土砂を除去し、補修や煙突の補強、屋根の解体と再設置を経て、今年5月に完了した。土中に埋まっていたレンガを見つけ出して欠損した部分の補修に使うなど、原状回復に努めたという。
とりわけ力を注いだのが耐震補強で、構造を傷めず内部空間の活用を可能にするため、内側ではなく外周に鉄骨フレームを新設する全国でも極めて珍しい手法を採用。内部には吊(つ)り材による補強も施した。総事業費は約20億円。
工事中には新たな発見もあった。物資搬送用の階段跡やエレベーター跡、地下暗渠(あんきょ)などが確認された。レンガの目地に詰められた当時の粘土や、創業期に業務提携関係にあった品川白煉瓦社製の耐火レンガも出土した。
保存修理工事は完了したが、全面的な一般公開は建造120年に当たる27年度となる。市は6号窯の隣接地に管理活用棟を建設し、観光施設として整備する計画だ。窯内には、レンガ製造の工程や産業の歴史を学べる展示エリアを設ける予定で、近く約10億円を投じた工事が始まる。
目玉となるのは、焼成室5室分を活用した約50席の飲食スペース。「文化財の中で食事を楽しむ」という趣向で、文化庁のインバウンド対応型活用制度を活用し、重文施設としては異例の許可が下りた。厨房(ちゅうぼう)は管理活用棟に設ける想定だ。現在、飲食事業者の公募(11月28日まで)を受け付けている。
市教委文化振興課の知久裕昭課長は「市民にとって、渋沢ゆかりのレガシー(財産)の地。貴重な文化財の中で特別な体験ができる場所であると同時に、地域活性化の拠点に育てていきたい」と意気込みを語った。【隈元浩彦】
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