“優れた犯罪小説”英ダガー賞に王谷晶さん 「ババヤガの夜」翻訳部門

2025/07/04 06:38 

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 ◇日本作品で初受賞

 優れた犯罪小説に贈られる英国推理作家協会賞(ダガー賞)の受賞作が3日(日本時間4日)に発表され、翻訳部門で王谷晶(おうたに・あきら)さん(44)の「ババヤガの夜」(サム・ベットさん訳)が選ばれた。日本の作品が同賞を受賞するのは初めて。

 「ババヤガの夜」は暴力を唯一の趣味とする女性が主人公のハードボイルド小説。けんかの腕を買われ、暴力団の会長の一人娘を護衛することになった女性が、社会の闇と娘の抱える秘密に迫っていく。2020年に河出書房新社から刊行され、24年に英訳された。

 ダガー賞は1955年に英国で創設され、犯罪小説・ミステリー分野では世界的に権威ある賞とされる。06年に設けられた翻訳部門には、これまで横山秀夫さんの「64(ロクヨン)」や東野圭吾さんの「新参者」、伊坂幸太郎さんの「マリアビートル」などがノミネートされてきたが、受賞には至らなかった。今年の翻訳部門の最終候補には、柚木麻子さんの「BUTTER」(ポリー・バートンさん訳)も選ばれていた。

 王谷さんは81年東京都生まれ。ライターなどを経て作家デビューした。著書に「完璧じゃない、あたしたち」などがある。

 王谷さんはロンドンで3日に行われた授賞式に出席。受賞スピーチで「私はミステリ専門の作家ではありません。さまざまな種類の作品を書きます。日本では作品と作家は細かくジャンル分けされているので、私は曖昧な作家と思われています」としたうえで、「曖昧であることは私の作家としてのテーマそのものです。自分の曖昧さを受け入れ、他人の曖昧さを認めることが世の中をよりよくすると信じています」などと思いを語ったという。【松原由佳】

毎日新聞

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