民事裁判の全判決データベース化 新法が成立 ビッグデータに活用も

2025/05/23 10:14 

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 民事裁判の全判決をデータベース(DB)化する新法が23日、参院本会議で可決、成立した。年間約20万件に上る判決がビッグデータとして活用されると、司法判断の傾向分析が進み、紛争の予防や早期の解決が期待できる。公布から2年以内に施行される。

 DBに収録されるのは、民事・行政訴訟の判決で、重要性の高い決定も対象とする。プライバシー保護のために秘匿決定されたり、閲覧制限の対象になったりした部分は含まれない。

 新法によると、DBは法相が指定した非営利法人が運営する。最高裁から電子データで判決を取得し、人工知能(AI)と人手を使って個人情報を別の単語に置き換える「仮名処理」をした上で、判例DB会社やリーガルテック企業に有償で提供する。一般の個人については、民間企業のサービスを通じた2次的な利用を想定している。

 仮名処理の範囲は氏名や生年月日といった個人を識別できる情報とし、法務省令や指定法人の業務規定で詳細を定める。当事者が追加で仮名処理を求める制度も設ける。

 DB化により、民間企業がデジタル技術を用いた横断的な判例分析やAIによる機械学習の素材として活用できれば、判決の予測可能性が高まるなど高度な法的サービスの提供につながるとみられる。

 現行制度では、裁判所のウェブサイトや民間の判例DB会社による判決の公開は全体の数%にとどまり、公開されていない判決を閲覧するには裁判所に出向く必要があった。

 民事裁判を巡っては、提訴から判決言い渡しまでを全面的にIT化する改正民事訴訟法が2022年に成立。26年5月までに全面施行されれば、現在は紙媒体の判決が電子データで作成されるようになる。【三上健太郎】

毎日新聞

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