長生炭鉱の遺骨収容 政府が専門家に聞き取り 現地調査の可否判断へ

2025/05/20 21:17 

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 太平洋戦争中の1942年、大規模な水没事故で朝鮮半島出身の労働者136人を含む183人が亡くなった山口県宇部市の海底炭鉱「長生(ちょうせい)炭鉱」での遺骨収容を巡り、政府は潜水など3分野の専門家にヒアリングを始めた。聞き取りをもとに、収容に向けた現地調査の可否を判断する。政府は「専門的知見も踏まえ対応を検討する」としてきたが、具体的な動きが判明するのは初めて。「できるだけ早く判断したい」としている。

 20日に東京都内であった、地元の市民団体「長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会」と厚生労働省の担当者らの面会で明らかにした。潜水と鉱山、土木構造物の3分野について専門家に意見を聞いているという。水没した坑道は閉鎖空間で、調査は危険が伴うことから、安全が確保できるかどうかを確認する。

 坑道は木製。刻む会が2024年9月に発掘した坑口は外気に触れた状態になっている。そのため厚労省によると、専門家はヒアリングで坑道の劣化に懸念を示しているという。

 刻む会は水中探検家、伊左治佳孝さん(36)の協力を得て、同年10月から3回潜水調査を行ってきたが、遺骨は見つかっていない。6月18、19日にも調査を行う。費用はクラウドファンディングなどでまかなってきた。面会を終えた井上洋子・同会共同代表(75)は「もう限界に近い。政府が資金、技術面でも支援してほしい」と話した。

 政府はこれまで現地に遺骨があるかどうか不明で、作業にも危険があるとして調査に消極的だった。一方、石破茂首相は4月7日、参院決算委員会で「危険があることを政府が承知していながら、作業は自己責任でというわけにはいかない」などと答弁。調査に前向きな姿勢を示していた。【栗原俊雄】

毎日新聞

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