音楽祭誕生のきっかけ作った元養護教諭 原点は障害者だった父の言葉
「あれはもう彼ら、彼女らの呻(うめ)きだったんだろうね」。50年以上前、養護学校の教諭が、障害のある子どもたちの詩を書き留めていた。子どもたちの呻きは、障害のある人がつづった詩にメロディーを乗せて歌う「わたぼうし音楽祭」誕生のきっかけとなり、音楽祭は今年50回目を迎える。障害に対する社会の理解を深めようと奮闘する彼女の信念とは――。
◇脳性まひの父が娘に伝えたこと
「私の父は障害者でした」。明日香養護学校の元教諭、向野(こうの)幾世(いくよ)さん(89)は脳性まひの父がいる家庭に生まれた。誰かが家を訪れると、足が不自由な父親ははいつくばって玄関に出て行く。「この家の主人はどこにいるのか」「しっしっ」。そんな冷たい言葉を浴びせられる姿を何度も見た。ある時、父に「悔しくないの」と尋ねたことがあった。父は「ちっとも悔しくない。幾世、心の値打ちがある人になりなさいね」と答えた。この言葉が、障害児教育に携わるきっかけとなり、心の支えとなった。
奈良女子大を卒業後、関東の孤児施設での研修などを経て、1966年、明日香養護学校の開校とともに奈良県の養護教諭になった。養護学校での12年間の教育を終えた後、子どもたちは就職できるのだろうか、上級学校へ行く能力があるのだろうか、結婚できるのだろうか。卒業後の子どもたちが「自由に生きられる居場所」を作ろうと73年、障害児の家族や養護学校の教員らが集まり市民団体「奈良たんぽぽの会」を発足させた。
◇障害持つ児童生徒の声を…
向野さんは教諭時代、児童・生徒の声を詩として書き留めていた。重度の障害を持つ子どもは長い言葉を発することができない。子どもらは横抱きにされ、涙やよだれを垂らしながら、精いっぱい何かを伝えようとしていた。「歩けなくても、口もきけなくていいから、たった一つの願いは一人でトイレに行けるようになりたい」という初潮を迎えた女子生徒の嘆き。付きっきりで介護してくれる母親への感謝や謝罪をつづった「ごめんなさいね おかあさん」から始まる男児の思い。向野さんが書き留めた詩はその後、奈良のフォークソング好きの若者が曲を付け「わたぼうし音楽祭」につながっていく。
障害児教育に携わって半世紀以上。障害をもつ人の環境は大きく改善された一方で、2016年に相模原市の知的障害者施設で起きた殺傷事件など、いまだ障害者への差別・偏見が残っていることに心を痛める。向野さんは「人が生きていれば光と影がある。影に向かって光を差し込むのが私の使命。小さな声を聞き逃さない。そんな人生を歩んでいきたい」と話した。【木谷郁佳】
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