大阪市立中・中3自殺 第三者委「『いじり』はいじめ」 45件認定

2025/05/12 18:00 

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 大阪市立中学3年だった男子生徒が2023年8月に自殺したことを受け、市教育委員会が設置した第三者委員会は12日、45件のいじめを認定し、いじめが自殺の最大の要因だとする調査報告書を公表し、市教委に提出した。男子生徒は水泳部に所属し、中1の冬以降、同級生の部員らからいじめを受けていたが、教職員らがいじめとして認識せず、深刻化させたと指摘した。

 報告書によると、男子生徒は23年8月14日午後11時50分ごろ、「ごめんなさい 今までありがとう すべてが嫌になった これ以上傷つきたくなかった」などと遺書を残して自殺した。市教委は、いじめ防止対策推進法に基づく重大事態と判断し、第三者委に諮問。23年10月に弁護士や臨床心理士からなる部会を設置し、生徒や教職員ら計100人への聞き取りなどを進めた。その結果、中1で1件▽中2で21件▽中3で23件――をいじめと認定した。

 報告書によると、男子生徒は中1の冬ごろ、部員から強い口調で責められた。中2になると、事実でもないのに「女たらし」などとからかわれた。中3になると、交流サイト(SNS)のフォローを外されたり、練習中に「あっち行け」などと排除されたりした。

 亡くなる当日の23年8月14日、大阪市大会の終了後に部員7人で開いた打ち上げに誘われなかった。SNSを通じて事実を知った男子生徒は友人に「ハブられた」(仲間外れにされた)や「病んだ」などとメッセージを送り、その日の深夜に自ら命を絶った。8月14日の出来事を、第三者委の部会は「生徒に及ぼした精神的打撃は甚大」と評価した。

 いじめが深刻化した背景として、報告書は、男子生徒が通っていた中学校で、いじめの認知件数が少ないことを示した。23年度は9・59件で、近隣4校平均の28・25件を大きく下回っていた。そのうえで、教職員のいじめに対する感度が鈍く、学校が、同級生らによるからかいなどを「いじり」とみなして「いじめ」と区別し、場を盛り上げるために許容した可能性も指摘した。

 水泳部の問題点として、顧問不在の時があり「大人の目が行き届かないことにより、生徒は暴力的な行動や悪口などを行いやすくなる」と指摘。顧問が部員に言動を注意したことはあったが「いじめとして認知されず、報告されることは一度もなかった」と言及した。

 第三者委の部会長を務めた曽我智史弁護士は12日に記者会見し「生徒が心身の苦痛を感じていれば『いじり』の多くはいじめに該当する。『いじりは許しません』と伝えることも重要だ」と指摘した。市教委の松田淳至総務部長は「亡くなった生徒とご遺族に、深くおわびとおくやみを申し上げる。調査報告書の内容を真摯(しんし)に受け止め、対応策を検討する」とコメントした。【高良駿輔、鈴木拓也】

 ◇相談窓口

・24時間子供SOSダイヤル

 いじめやその他の悩みについて、子どもや保護者などからの相談を受け付けています。原則として電話をかけた所在地の教育委員会の相談機関につながります。

 0120・0・78310=年中無休、24時間。

・子どもの人権110番

 「いじめに遭っている」「家の人に嫌なことをされる」など、先生や親には話しにくい相談に法務局の職員や人権擁護委員が応じます。

 0120・007・110=平日の午前8時半~午後5時15分

・まもろうよ こころ

 さまざまな悩みについて、LINEやチャットで相談を受けている団体を紹介する厚生労働省のサイトです。年齢や性別を問わず、自分に合った団体を探せます。

・こころの悩みSOS

 悩みを抱えた当事者や支援者への情報のほか、相談機関を紹介した毎日新聞の特設ページです。

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