泊原発3号機が審査「合格」へ 北海道電力、27年の再稼働目指す

2025/04/30 11:42 

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 2012年5月から停止している北海道電力泊原発3号機(北海道泊村、出力91・2万キロワット)について、原子力規制委員会は30日、安全対策が国の新規制基準を満たしているとする審査書案を了承した。事実上の「合格証」で、北電は地元同意を得た上で27年中の再稼働を目指す。今後正式に決定されれば、東京電力福島第1原発事故を受けて策定された新規制基準に北海道で初めて適合した原発となる。

 北電は東日本大震災後の11年8月に3号機の営業運転を再開したが、12年5月までに1~3号機が定期検査に入り、全基停止の状態が続いていた。

 北電は27年3月までの完成を目指して高さ海抜19メートル、長さ約1200メートルの防潮堤を建設中で、同年中に再稼働させたい考えだ。ただ、鈴木直道・北海道知事は核燃料を原発に陸上輸送する計画の詳細な説明を北電に求めており、再稼働の是非について明言していない。

 12年の規制委発足後、全国では泊原発3号機を含む27基が再稼働に向けて審査を申請し、すでに17基が通過している。北電は新規制基準が施行された13年7月の当日に1~3号機の審査を申請していた。

 一方、同日に申請した九州電力川内原発1、2号機や関西電力高浜原発3、4号機など、3社の4原発7基は17年までに合格している。泊原発は09年に運転を始めた、国内で最も新しい3号機の審査を優先したにもかかわらず、申請から12年が経過。これまでに審査を申請した加圧水型軽水炉(PWR)で、唯一結論の出ていない原発だった。

 審査が長期化したのは、北電の見通しの甘さや不手際で、原発の敷地内外にある断層の評価に時間がかかったためだ。北電は当初、耐震設計の基になる地震の最大の揺れ「基準地震動」を550ガル(ガルは加速度の単位)、最大の津波の高さ「基準津波」を6・95メートルとして申請。しかし度重なる見直しを経て、最終的にはそれぞれ693ガルと15・68メートルに引き上げた。

 その結果、申請時に1~3号機で計900億円超を見込んでいた安全対策の費用は、3号機だけで5150億円に増額した。テロ対策に必要な費用を加えると、さらに膨らむとみられる。

 今後は意見公募(パブリックコメント)を経て規制委が審査書を正式に決定すれば、25年夏にも安全審査に合格となる。

 北電は規制委から、原発敷地内の港に停泊した核燃料の輸送船が津波で流されて防潮堤を壊す可能性を指摘され、昨年8月、停泊させる場所を泊原発の敷地外に新たに設ける方針を示した。3号機には未使用の核燃料が168体あり、使用済み核燃料の保管場所にも余裕があるため、再稼働に支障はないという。ただ、新たな停泊場所は決まっていない。【小川祐希】

毎日新聞

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