沖縄と政府の緊張関係、今後も続く見通し 辺野古の地盤改良工事着手
米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の名護市辺野古移設計画で28日、最大の懸案となっている軟弱地盤の改良工事が始まった。政府が玉城デニー知事に代わって地盤改良工事に必要な設計変更を承認する異例の「代執行」に踏み切って丸1年。移設断念を求める玉城知事は、計画全体に影響する重大な事態が発生した場合は法的な対抗措置を取る構えで、計画を進める政府・与党との緊張関係は今後も続く見通しだ。
「(工事の計画全体に影響するような)軟弱地盤の問題に匹敵する状況になった場合には、何らかの手立てを断じなければならない」。工事着手の一報を受けた玉城知事は沖縄市で報道陣の取材に応じ、今後、工事計画の変更を強いられるような不測の事態が起きれば、公有水面埋立法などの法令に基づき、工事を止める法的措置を取る可能性もあるとほのめかした。
ただし、そうした事態が実際に起きるかは未知数だ。県側は最深部が海面下90メートルに達する軟弱地盤の改良工事は国内に実績がなく「難工事になる」と予想するものの、防衛省は「実績のある海面下70メートルまでのくい打ちで構造物の安定性は確保できる」と主張する。
県が法的措置を取れる場面が出たとしても、辺野古移設を巡る政府と県のこれまでの法廷闘争で、工事を止める県の処分を政府が「裁決」で取り消し、司法が追認する流れが定着している。玉城知事も現行の法制度が見直されない限り、工事を完全に止めるのは難しいと認める。
こうした中で県が期待するのは、基地移設を進める自民党と公明党が衆議院で少数与党となった国会での議論だ。玉城知事を支えるある県議は「移設に反対する野党の動きに期待するのが現実的だ」と話す。
名護市などを地盤とし、埋め立て工事中止を公約に掲げる立憲民主党の屋良朝博衆院議員は、移設計画を巡って野党内で意見が割れている現状を踏まえ「他党との意見のすり合わせは慎重に進めないといけない」と指摘。「自民と公明が代執行の強権を発動させてまで政治的に進めているのだから、政治の力ではね返していくしかない」と述べた。
一方、防衛省は28日、X(ツイッター)で工事着手を伝え、「普天間飛行場の全面返還の実現に向けた大きな前進だ」と強調した。【比嘉洋】
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